当時の編集長肝入りで先鞭がついた、経済誌の鉄道特集第5段である。
(第1弾→「鉄道革命」、第2弾→
「鉄道進化論」、第3段→
「鉄道新世紀」、第4段→
「鉄道完全解明」(増補保存版))
目次にある「意外と知らない? 鉄道7つの誤解」とは、
・Q1.新幹線は日本の発明?
・Q2.鉄道会社は海外展開していない?
・Q3.四国に新幹線は走らない?
・Q4.鉄道は自動車よりも環境にいい?
・Q5.JRが分離した路線はつねに赤字?
・Q6.満員の通勤客で鉄道会社は大儲け?
・Q7.ホームドアの設置は難しい?
であり、本誌の答えは、
・Ans.1→No(「新幹線は、実は海外の技術の集大成ともいえる高速輸送システムだ」)
・Ans.2→No(本誌参照)
・Ans.3→フリーゲージトレインが実用化されれば、四国に「新幹線(車両)」が走る日が来るかもしれない。
・Ans.4→ディーゼル車両の燃費は1.4km/Lにすぎず、客が少なくガラガラの車両は自動車よりも環境に悪い。
・Ans.5→No(「知恵を絞れば廃線を免れることは可能」)
・Ans.6→No(本誌参照)
・Ans.7→「ドア位置や停車位置が異なる場合にも対応可能なホームドアの開発が進んでいる」
である。
本誌に最も期待していたのは、『
三陸鉄道 大震災の記録』(バンチコミックス)のような被災地の取材記事だったが、執筆者は
2011年 4/16号の記事(「被災鉄路 再生の行方」)も担当した鉄道専門誌(鉄道ジャーナル)の記者である土屋武之氏であり、4ページしかない。これでは、
専門誌のそれと差異がない。
また、「赤字路線存続への処方箋はあるのか?」という鉄道経営で最大のテーマに関しても、「運輸評論家」の分析なら、専門誌でも読める。角本良平氏(国鉄OB・交通評論家)のぐいぐい引き込まれる経済分析(『
JRは2020年に存在するか』など)には遠く及ばない。どうしても鉄路維持に傾いてしまう交通経済学・交通工学の学識経験者には見られない、純粋に経済学的な分析が欲しかった。
また、上記のAns.1(川辺謙一氏)は明らかな誤りである。
「日本の新幹線や鉄道技術を「世界に冠たるもの」と信じるのは、今後の発展や海外展開の妨げになる」
という川辺氏の意見が間違っているとは思わないが、新幹線の初代0系車両の設計に、旧日本軍の零式戦闘機の設計者が携わっていたことは有名であるし、当時は、鉄軌道で時速200キロを出すこと自体が一般の理解を超えていた。従って、従来技術の積み上げで可能なことを示さないと、超高速鉄道計画の実現自体が頓挫する状況だったのである(『超高速に挑む』(碇義朗)、のち『
「夢の超特急」、走る!』 として文庫化)。また、新幹線の強みは、システムインテグレーションにあり、これが日本のシステム工学の嚆矢となった(『新幹線をつくった男 島秀雄物語』(高橋団吉)、のちに
文庫化』)。
そのほか、JR西の社運は、本誌に紹介されている新駅建設などではなく、間違いなく福知山線脱線事故の総括では?、「北海道の鉄道基盤をどう守るか」の執筆がなぜか冷泉彰彦氏(主な連載に、ニューズウィーク日本版「プリンストン発 新潮流アメリカ」など。冷泉氏は隠れ鉄道ファンだったっけ?)、等理解に苦しむ部分が多い。
■総評
手早く知識を得るには良いが、新聞報道でも得られる情報が多く、内容の浅さは否めない。
8ページにわたる「主要642駅のバリアフリー状況と利便性」一覧は力作だろうが、ボリューム稼ぎではと勘ぐってしまう。リニアに対するインタビューも山田佳臣社長なのは、葛西会長(近著に『
国鉄改革の真実―「宮廷革命」と「啓蒙運動」』など)のインタビューが取れなかったからだろうか。一方で、JR東日本社長清野智氏のインタビューは、3ページにわたり読み応えがある。鉄道専門誌ではなかなか期待できない企画である。ゆえに★二つとしました。