戸高 あれはライン・オブ・バトルシップといって、「戦列艦」という分類です。
半藤 ネルソンが乗っていた「ビクトリー」号。
って、いきなりチョンボだもんなぁ。
だれが発明したんだろうか? この「ライン・オブ・バトルシップ」って和製英語。そもそも英語になっていないじゃないか、この言葉。
「戦列艦」は、正しくは「シップ・オブ・ザ・ライン」だね。英国のポーツマスまで行って、ちゃんと「ビクトリー」を見学(ただし艦内撮影禁止だった)して来て言っているんだから、こっちの言っていることのほうが間違いない話。
旧日本海軍の造船官で、もう存命な方ってのは居ないだろうけど、でも、海上自衛隊出身者なら幾らも居るだろうに、この企画、どうして1人くらい軍艦の専門家を加えなかったのか、理解不能。マニアックな軍艦オタクたちでは、とてもではないが、納得できるレベルの議論というにはほど遠く、この企画を立てた編集部のチャラな姿勢ばかりが目立つ出来損ないの書籍というほかはない。
しかしながら、旧帝国海軍の戦争観や戦略戦術思想、海軍士官たちのメンタリティーや人事政策への批判となると、さすがこのメンバーならではというか、まさしく本質を突いた議論が少なくない。
戸高 私はあの「(戦艦大和の)沖縄特攻」の命令書には怒りを感じています。命令書には真っ先に「海軍の伝統のために行け」と書いてある。私は嘘でも「日本国のため」を先にするべきだったと言いたいですね。あの命令書には、それこそ、「海軍あって国家なし」が表明されています。
半藤 「帝国海軍力をこの一戦に結集し、光輝ある帝国海軍海上部隊の伝統を発揚するとともに、その栄光を後昆に伝えんとするに外ならず」というのだから、要するに海軍の栄光のためなんだねえ。
斯く「帝国海軍」とは軍服を着た官僚たちが、要は、おのれらの利益を図るための官僚組織だったというほかはなく、太平洋戦争で組織瓦解の瀬戸際に追い詰められると、とたんに建て前や奇麗事なんか吹っ飛んで、地肌が剥き出しになったというのが本当のところ。
政治というものを軍人・官僚らが牛耳ると「こうなる」という典型的事例と見るべきが正解。
この点こそ、この間の東日本大震災やら原発事故に対する東電や中央省庁官僚らの対応、あるいは、現今の経済情勢のなかで、なおも消費税値上げを称える財務官僚らの本質へと繋がる大きな問題ではなかろうかと思う。