この作品は、幼稚園から連れ去られた息子をめぐる誘拐事件が起こるわけだが、犯人側からは金銭の要求をしない等、何が目的なのかがよくわからないまま話が進んでいく。また、誘拐された家族側も何か秘密を抱えているようで、登場人物が全てあやしく感じられる。
作品構成は、7つの章で描かれているが、大きく3つに分けられる。一つ目は帯のあらすじに書かれている通りの誘拐事件で、2つ目は事件の本当の顔ともいうべき舞台裏が描かれ、3つ目は最初の事件の後日談のような事件が起こる。
最初に起こる誘拐事件が、ページをめくり話が進んでいくごとにだんだんと予想もつかないような展開になっていき、中盤以降では、まったく別の予想外の真相が明らかになっていく。最初の誘拐事件の本当の姿を予想できる読者はあまりいないのではないか。
読了し終えて、犯人側の思うように事が進むのは、出来すぎのような気がして、現実の世界ではそのように簡単ではないとは思うが、先の読めない誘拐劇を十分に楽しませてもらった。