5年くらい前だったかに読んだ「娼年」の続編です。
「娼年」は非常に読み応えがありました。コールボーイつまり売春夫という極めて特殊な世界を描くという、キワモノっぽいテーマなのですが、いやらしさとか不潔さとかは全くなく、むしろさわやかで真摯な世界が展開したのに舌を巻いたものです。セックスという人間の根源的な営みに真っ正面から取り組んだ誠実な作品でした。
今度の新作について著者はどこかで「自分の一番大好きな作品に、久しぶりに会い、決着を付けたかった」というような趣旨のコメントをしていたように記憶しています。なるほど。
それにしても「逝年」とはちょっとまた随分なタイトルではないですか。私は最初にこれを見たとき、主人公リョウが、前作から一足飛びに数十年が経過し、晩年を迎えてやがて死に至る物語かと思ってしまいました。「娼年」に対応するのだったら、もっと他の表現があり得たんじゃないだろうか?「凄年」とか。そう、「凄絶」な物語なのです。
実際は、前作のすぐ直後の1年間ほどが描かれるだけです。ナンバーワンコールボーイとしての彼の〈商売〉は環境が変わっても健在で、種々多様な顧客相手に、それぞれに心のこもった奉仕をして癒すという仕事を遂行し続けています。そこにあるのはプロとしての矜持とさえ言えます。「売春=性の商品化」と言ったら、人倫に反した汚れた行為である、というのは世間一般の常識的見方でしょうが、ここで描かれるセックスには上述のように全くそういう色合いは無いのです。むしろ人間が他者の存在を受け入れそして生の真理を追究するスタンスであって、「求道的」でさえあるのです。それは悲劇的な展開の中でより輝きを増します。
私が性描写の場面を読んで興奮でなく涙ぐんだのは、この作品がおそらく初めてでしょう。
おすすめですが、読むならまず「娼年」の方から読んで欲しいですね。