また例のホロコーストものね、と思って読み始めたのですが(中味はたしかにそうなのですが)、
読後のこのさわやかさはどうでしょう!
思わず微笑みたくなるような、豊かな気持ちになる不思議な本です。
ダニエル・シュタイン(実在の人物がモデル)のような人物がいるこの世界は、まだまだ捨てたもんじゃないと思えてきます。
とはいえ、書かれているのは決して(当然のことながら)やさしい話ではありません。
過去と現代を行き来しながら、様々な人の手記、書簡、日記、インタビューなどで物語は構成されます。
登場人物たち一人ひとりが(ほんの少ししか登場しない人たちまで)実に個性的で鮮やかに丁寧に描かれます。
しかも、短い文章の積み重ねなので、とても読みやすい!
そして、読み進むに従い、
キリストというのは、もしかするとダニエル・シュタインのような人物(背が低くずんぐりむっくりして、目が丸く、愛想がいい。時にひょうきん者)だったのではないか…と思えてくるのです!
また、これは(ダニエル・シュタインの周囲をとりまく)女たちの物語でもあります!
キリストの時代も今も、女たちはたくましく日常を生きています。
もしかするとそこに、世界を変える力が(秘密が)あるのかもしれない…そう思わせてくれます。
ロシアという国の懐の深さを思い知らされた気がしました。