ほぼ日本では初のカルタゴ・フェニキア通史。オリエント→ギリシア→ローマという従来の地中海史では抜け落ちてしまう部分にスポットライトを当て、正当な歴史の主人公としての役割を再確認させる一冊だ。
フェニキア文字、ポエニ戦争など、断片的にしかこれまでとりあげられなかったものも踏まえ、立体的・鳥瞰的に地中海の興亡の歴史を浮き上がらせる。史料的制約・歴史観のバイアスもあろうが、そういった部分を明らかにしようというのは歴史家の矜持なのだろう。
旧約聖書の時代から海上覇権の確立、ローマとの攻防、その宗教や神話、文化(日本で一般書として紹介されるのは非常に珍しいものもあるのではないか)。あまり日本人にはなじみのない世界ではあるが、一面的な地中海歴史への理解を改め、深めさせるものであるといえよう。