本書は、平成17年に制定された会社法対応の注釈書の1つです。現在は他に、(1)江頭編『会社法コンメンタール1』(商事法務、2008年)、(2)江頭ほか編『会社法大系1』(青林書院、2008年)、(3)奥島ほか編『新基本法コンメンタール会社法1』(日本評論社、2010年)、(4)江頭ほか編『論点体系 会社法1』(第一法規株式会社、2012年) が出版されています。ただし、(2)(4)は正確には注釈書ではありません。
本書は、基本的に、沿革、趣旨、解釈上の問題点、実務上のポイント、という構成で、条文解説を行っています。しかし、「沿革、趣旨、解釈上の問題点」の3つが重複している記述が多々あり、どういう意図で重複記載をしているのか、分かりかねます。
「実務上の留意点」「実務上のポイント」という項目は、実務対応を示す意図と推測できますが、ほとんどが旧商法からの改正点を指摘したにとどまり、特に実務に対応した内容になっていません。実務を知らない学者が、実務の在りようを調べることなく執筆を行ったことが原因と思われます。
本書を読むと、ほとんどが立案担当者解説、新版注釈会社法、江頭先生の会社法2版、にのみ依拠しています。現在では、江頭先生の会社法も4版に改訂されていますから、本書を参照するよりも、引用元や別の体系書を参照した方が正確です。条文解説のなかには、新版注釈会社法や旧版の基本法コンメンタールの解説を無批判に引用した結果、会社法に未対応の解説もあり、参照する際には注意が必要です。
このようなことから、本書(第1巻)は、発売当初から注意を要する書籍でしたが、今現在(2012年)では、数ある注釈書のうち、最も参照する価値が乏しい注釈書と思います。