原作を読んでから映画を見るとどうしても答え合わせしてしまうものだが、本作は私にとっては残念ながら「ハズレ」。原作に意外な解釈でひとひねりした演出を施した結果、「それも正解」とうならせてくれるものも多々あるが、本作では原作の持つ空気感を忠実に再現しようとして失敗しているように思う。登場人物が限られていてなおかつそれぞれの登場人物が丁寧に書き込まれた原作が存在する場合、キャスティングが映画の出来上がりを大きく左右するのは当然だが、どうも秋吉久美子では(確かに実年齢の割には造形を保っているかもしれないが)原作の千桐の持つ透明感や清潔感がないし、心惹かれた男と関係を持つためにその男からの借金を自分へのいいわけにしなければ次に進めないような切羽つまった必死さや、経験と年齢を積み重ねてはいてもどこか少女のような生硬さが伝わってこず、無理して作り込んだ垢抜けなさばかりが鼻につく。かたや相手役の永島敏行はどうにも純朴すぎるキャラクターが裏目に出て、世慣れてスレた所謂チョイ悪オヤジの懐の深さや、それでいながら一瞬かいま見せる少年のような含羞の感じられないなんとも奥行きのない役作りで、結果原作のエッセンスとも言える官能的でありながらもみずみずしく透明な空気感のようなものはどこへやら、ただひたむきなはずの二人の関係が単なる中年男女の生臭い絡みに終始してしまっている。
降板劇が話題になった萩原健一もどうもピンとこないが、木村多江Xやっぱり佐藤浩市、あたりでやったら結構いいセンいったのではあるまいか。