「逆説シリーズ」第九作。琉球論、鉄砲伝来、倭寇論を挟んで待望の戦国時代に入る。
冒頭の琉球の紹介は倭寇論への布石だと思うし、それなりに新鮮だったが、東アジアの海洋交通の要衝としての琉球をもっと論じても良かったのではないか。本書における鉄砲伝来の話は、現在では定説になっており新規性がない。この時のポルトガル商人が日本に梅毒をもたらした点に触れなかったのは何らかの配慮か ? 倭寇論は全体としてはゴモットモなのだが、本人が言う通り話がクドイ。ただ、日本人が無意識に思っている「真実は口にしなくても以心伝心で相手に伝わる」という考えが国際的には通用しない事は銘記すべき点だと思う。次いで、いよいよ戦国時代。"隠れた"初の戦国大名、朝倉孝景の「戦国十七条憲法」が再登場する。やはり"初"の人間は偉大である。それに比べ北条早雲は謎の人物である。私は鎌倉時代の北条氏の末裔かと思っていた。毛利元就については、小国の次男から伸し上がったのは知っていたが、これほどの謀略家とは思わなかった。それでいて悪評判の立たない不思議な英雄である。武田信玄の話はライバル上杉謙信と絡んで、やっぱり面白い。当時の兵の9割は農民だったと言う指摘(兵農分離していない)は鋭い。山本勘助に対する軍師論も興味深いが、武田家の編成が「甲州純血主義」にあった所に信玄の限界があったという論にはナルホドと思った。唯一人、信長だけが真の実力主義者だったのである。信玄が農業土木・治水に優れていたという論もうなづける。最後に「天下布武」の公印を掲げ、"本気で"天下統一を目指した信長の独創に触れる。重商主義による兵農分離、宗教勢力に対する徹底した弾圧、鉄砲の早期活用、地名改変、上洛後の部下の統制。まさに時代の常識を破る天才である。
著者の言う通り、読者が最もワクワクする戦国時代に入って来た。これからの波乱に富んだ展開を期待させる秀作。