年老いた作家と俳優が青春時代の輝きを取り戻そうと「演劇」を創作しようとする。
主人公の作家老人の「なんか気づいたら、オレじいさんになってたよ」という視点がおもしろい。
「杖」のエピソードなど、随所に挿入される小ネタがいちいち笑える。
著者の前田司郎はまだ30代前半の若者なのだが、「人生は積み上げるものじゃなくて転げ落ちるものだ」という時間感覚をすでに持っている(若いから持っているのか?)。
過去の記憶の曖昧さ、かつて抱いたはずの感情の不確かさについて主人公は時に頭を抱える。
人が時間をつかむときに頼りにするこれらの要素はあまりにも脆弱なのである。
結局、確かなものは「身体」しかないのだろうか?
そう思わせる結末の落とし方にはちょっぴり寂しさを覚えたが、くだらなさの領域で、ぎりぎりなところまで描ききった作者の力量というか、感性には恐れ入る。