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心の通い合わなくなった夫や子どもと暮らす50代の主婦、妙子。愛犬のポポはそんな彼女が唯一信頼できる大切な存在だ。ところがある日、そのポポが隣家の子どもをかみ殺してしまう。非は子どもにあるにも関わらず、世間体から犬を処分しようとする家族と決別して、妙子はポポを連れて家を出る。行く当てもなく頼れる人もいない、妙子とポポの逃避行がはじまった。
直木賞作家の著者は、綿密な取材を基にした存在感のある人物描写に定評がある。本書ではふつうの主婦の心理を描いているが、うっ積した怒りや疎外感を浮かび上がらせる視線は非情なほどまっすぐで、それが紋切り型の女性像を超えた圧倒的なリアリティーを生み出している。また、次第に野生の「犬」へ戻っていくポポの姿が、家庭や社会的な圧力という足かせを外して「女」として年老いていく妙子の姿に重なるなど、平易な文章に込められたテーマは切実だ。さらに、安易な成長物語や愛犬物語を避けつつ、リアルな設定の中に逃避行という冒険的なおもしろさを盛り込んで、読み手に次々とページをめくらせる手法も見事である。
一方で、気になったのは、「冒険」と「心理描写」のバランスだ。妙子という女のリアリティーが際立ってしまって、次々に何かが起こるエンターテイメント的な早い展開とかみ合っていない部分も見られた。
いずれにしても、妙子に非日常的な冒険を体験させることで、逆に逃げられない現実の女たちに読み手の目を向けさせることに成功している。天使でも悪魔でもないふつうの女が家庭や社会の中で年老いていくとはどういうことなのか、妙子の逃避行から考えさせられるはずだ。(小尾慶一)
出版社/著者からの内容紹介
愛犬ポポが、隣家の子どもをかみ殺した。世間のそしりから逃れるため、そして娘たち、夫の反応に失望し、ポポをともなって出奔した主婦妙子。彼女に救いは訪れるのか――。直木賞作家篠田節子による、「女性自身」連載の問題作。
内容(「BOOK」データベースより)
渡せない、死なせたりできない。熱い思いが込み上げてきた。自分の子供が、罪を犯したとして、あっさり引き渡して殺させる母親がどこにいるだろう。家族とは、幸せとは?直木賞作家が問う問題作。
内容(「MARC」データベースより)
夫でも子でもなく、彼女が最後に信じたのは…。隣家の子供を噛み殺した犬を連れ、すべてを捨てて彼女は逃げる。家族とは、幸せとは何か? 『女性自身』連載に加筆・修正を加えて単行本化。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
篠田 節子
東京生まれ。東京学芸大学卒業。90年『絹の変容』で第3回すばる新人賞を受賞し、作家活動に入る。97年『ゴサインタン』で第10回山本周五郎賞受賞。同年『女たちのジハード』で第117回直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
東京生まれ。東京学芸大学卒業。90年『絹の変容』で第3回すばる新人賞を受賞し、作家活動に入る。97年『ゴサインタン』で第10回山本周五郎賞受賞。同年『女たちのジハード』で第117回直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)