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逃避行
 
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逃避行 [単行本]

篠田 節子
5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (16件のカスタマーレビュー)

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商品の説明

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心の通い合わなくなった夫や子どもと暮らす50代の主婦、妙子。愛犬のポポはそんな彼女が唯一信頼できる大切な存在だ。ところがある日、そのポポが隣家の子どもをかみ殺してしまう。非は子どもにあるにも関わらず、世間体から犬を処分しようとする家族と決別して、妙子はポポを連れて家を出る。行く当てもなく頼れる人もいない、妙子とポポの逃避行がはじまった。

直木賞作家の著者は、綿密な取材を基にした存在感のある人物描写に定評がある。本書ではふつうの主婦の心理を描いているが、うっ積した怒りや疎外感を浮かび上がらせる視線は非情なほどまっすぐで、それが紋切り型の女性像を超えた圧倒的なリアリティーを生み出している。また、次第に野生の「犬」へ戻っていくポポの姿が、家庭や社会的な圧力という足かせを外して「女」として年老いていく妙子の姿に重なるなど、平易な文章に込められたテーマは切実だ。さらに、安易な成長物語や愛犬物語を避けつつ、リアルな設定の中に逃避行という冒険的なおもしろさを盛り込んで、読み手に次々とページをめくらせる手法も見事である。

一方で、気になったのは、「冒険」と「心理描写」のバランスだ。妙子という女のリアリティーが際立ってしまって、次々に何かが起こるエンターテイメント的な早い展開とかみ合っていない部分も見られた。

いずれにしても、妙子に非日常的な冒険を体験させることで、逆に逃げられない現実の女たちに読み手の目を向けさせることに成功している。天使でも悪魔でもないふつうの女が家庭や社会の中で年老いていくとはどういうことなのか、妙子の逃避行から考えさせられるはずだ。(小尾慶一)

出版社/著者からの内容紹介

愛犬ポポが、隣家の子どもをかみ殺した。世間のそしりから逃れるため、そして娘たち、夫の反応に失望し、ポポをともなって出奔した主婦妙子。彼女に救いは訪れるのか――。直木賞作家篠田節子による、「女性自身」連載の問題作。

登録情報

  • 単行本: 278ページ
  • 出版社: 光文社 (2003/12/15)
  • ISBN-10: 4334924158
  • ISBN-13: 978-4334924157
  • 発売日: 2003/12/15
  • 商品の寸法: 19 x 13.4 x 2.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (16件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 633,666位 (本のベストセラーを見る)
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18 人中、18人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 女三界に家なし, 2007/4/17
By 
ヤマボー (千葉県) - レビューをすべて見る
(トップ500レビュアー)   
レビュー対象商品: 逃避行 (光文社文庫) (文庫)
なんとも身につまされる小説だった。専業主婦としてひたすら家庭を守り、娘ふたりを育てあげ、夫を支え続けた主人公。婦人科の病気で手術を受け、術後の体調も思わしくない。「女としては終わっている」という夫の心ない言葉。社会に出てバリバリ働く娘たちとの間にできた溝。なりふり構わず子供のため夫のためと頑張ってきたのに、これまでの自分はなんだったんだろう・・そんな矢先、愛犬のポポが隣家の小学生をかみ殺してしまう。執拗に張りこむマスコミ、道義的にも犬の殺処分をと迫る近隣住民の目。仕方がないとあっさりそれに従おうとする夫や娘。

なんとしてでも犬を死なせるわけにはいかない・・彼女はたったひとり犬を連れて家を出る。預金通帳とはんこだけを持って。かくして彼女はポポを守るための逃避行を続ける。ときに長距離トラックのヒッチハイクをし、ときに廃屋で寝泊りし、その暮らしは苦難を極める。しかし彼女のそばにはポポがいる。辛いときも楽しいときも、自分のそばに寄り添っていてくれた唯一の存在。いまとなってはただひとりの家族になってしまった犬。そしてひとりと一匹は逃げ延び、終の棲家を得るのだが・・。

この逃避行を単なる現実逃避ととらえるのは切なすぎるように思う。確かに現実逃避には違いないが、そこにはなんともしがたい孤独の穴が口を広げている。ともすればその穴に落ちてしまいそうな彼女のたったひとつの救いは犬だった。家族にさえ理解されていないという感覚。自分ひとりが取り残されたような錯覚。そしてあまりにも切ない結末。「女三界に家なし」ということわざをつい思い出してしまった。
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6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 犬とは, 2007/11/15
By 
ヤキソバ (奈良県) - レビューをすべて見る
(殿堂入りレビュアー)    (トップ100レビュアー)   
レビュー対象商品: 逃避行 (光文社文庫) (文庫)
逃避行をするのは犬と、その飼い主である主婦だ。
この道程で、本書は色々な事を教えてくれる。

最も印象的なのは、第五章「終の棲家」だ。
この章に、犬の持つ野性、田舎暮らしに対する幻想、老いる事の意味、などが凝縮されている。

本書は感動的だ。
著者は、読者の内面を、深くえぐる形で、この悲劇を著わしている。
そこには、押し売りの感傷は微塵も無く、有りのままの人生を描いている。

顔をそむけたくなる場面もある。
何故なら、人生のステージにおいて、分かってはいるが、口に出しにくい事柄がストレートに描かれている。

タイトルは逃避行であるが、決して逃避したのではない。
当初こそ衝動的であったが、犬と主婦は、わずかな期間で、避けられない生の営みに近付いた。

注意深く読了すると、犬の本性の野性的な部分に驚く。
本書は、ペットとしての犬について、深く考えさせられる。

著者渾身の力作だ。
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10 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 読み終わった後愛犬を抱きしめたくなる, 2008/3/19
レビュー対象商品: 逃避行 (光文社文庫) (文庫)
隣の馬鹿息子(失礼!)をかみ殺してしまった愛犬の「ポポ」(ゴールデンレトリバー)と普通の主婦が世間の目を逃れて逃げるお話。
篠田作品としては小粒でした。
でも犬馬鹿な私はポポの気持ち、主婦の気持ちが痛いほどわかって涙が出ました。
ポポが悲しい目で主人公を見上げるその目や、雨にぬれて汚れた被毛や、そんな情景がありありと手にとるように浮かんでしまい心が痛みます。
ゴールデンの表現がとても細かくて正確。篠田節子は犬飼ってたっけ?と思いましたがどうでしょう?
凄く良くワンコの様子が描けています。どこかの書評で犬についての記述が多すぎてよくわからないと言うようなことが書いてあったけど、飼ってない人にとってはそうかも。
そもそもこの主婦の気持ちがわからないかも。でも私にはよくわかります。
読み終わってから愛犬ををひしと抱きしめて「アポロ〜。どこまでも一緒に逃げようね。地の果てまでいくからね」と言いました。
犬飼いの方なら読んだ後必ずそう言うこと間違いなし!
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