全体の雰囲気は日本の古代の世界、神と人間が深い関わりをもっていた頃の時代で、たつみや章の「月神 シリーズ」や荻原規子の作品世界を彷彿とさせる感触があります。この物語で言う「送り人」とは、自分の死を「自覚」できずに彷徨う死者 の魂を黄泉の国まで導くのが仕事で、古代の村社会においては「尊敬」の対象であると同時に、忌み嫌われる存在でもあって、孤独な一生を送ることになるという・・・。
良くある巫女や祈祷師、呪術師などの成長物語かと予想して読み進んでみると、これが意外とダイナミックな展開が繰り広げられてビックリさせられました!
年老いた送り人「真由良」は、一族皆殺しの場面に生まれ落ちて只一人生き残った赤ん坊を助ける。「伊予」と名付けて共に暮らし、平穏な13年の年月を経て運命の歯車が大きく動きだす!!
偶然発現した「技」を「王」に知られ追われる身になった娘の逃避行。不本意ながら過す事になった「王」の館での手に汗握るやりとりや凄惨な結末。そして明か された出生の秘密から分かった娘の真の「力」と、果たすべき、恐ろしくも大切な役割・・・と予想もできない展開が続きます!最後は多くの魂を救った娘が、友と共に明るい未来に向かって踏み出す光景で終り、単純な成長物語の枠を超えて、長き不幸の時代を浄化するための存在として目覚める娘の様子が描かれて読み応えがあり、最後まで一気に読んでしまいました。
伊予を取り巻く人物や神々との交流場面は情感豊かに丁寧に描かれていて安心して読めます。また、結末の展開は全く独自の世界観が感じられて感心しました。数年前までは聞いたこともなかった「送り人」の呼称を使った物語で、正直際物的な感もあって余り期待しなかったのですが、紛れもない「送り人」という存在をしっかりと描き出し、立派な「和製ファンタジー」になっていますのでお薦めしましょう。