非常に問題の多い書である。
著者の述べる「噛み合わせが悪くなったことで、体調に異変を起こし、結果として無気力になる」ということが全く無い、とは言わない。しかし、基本的な認識に間違いが多すぎる。
まず、著者の言う「最近の若者は無気力」というのは、どういう理由で出たことなのだろうか? 著者がこの書で示すのは、日米韓中4カ国の高校生の勉強に対する意欲だけである。これが低いから意欲が無い、というが、国際比較でわかるのはお国柄だけであってこれが低いから「最近の…」とはならない。そもそも、勉強に対する意欲が無くとも、他に情熱を傾けていれば、それは「無気力」とは言えまい。
また、「凶悪犯罪の原因は噛み合わせが悪いから」もおかしい。著者は散々、団塊の世代と比較して、「かみ合わせが悪化した」と言うが、団塊の世代の方が人口比でも多くの凶悪犯罪を起こしていた事実がある。完全な矛盾である。
さらに、フリーター問題、ニート問題の原因が無気力だ、と言うのも間違いである。例えば、フリーターに対する意識調査では、多くの者が正社員希望をしている。なりたくともなれない現実があるのだ。社会構造の問題を気力の問題を気力の問題に矮小化すべきではない。ニート問題にしても同様だ。
ここに書かれている医学的な部分について、それが正しいのかどうか、私には判断しかねる。だが、明らかに著者の語る社会問題などの部分は間違っている。そして、要所要所に「私なら治療できる」「私のところでは受け入れている」という言葉が散りばめられる。要は、社会問題を、自らの病院の宣伝に利用しているだけではないのか?