あるネットの記事で取り上げられていたミステリ作家ということで、手に取った本書。
本作品は、吹奏学部に所属する清水南高校一年生のハルタとチカの活躍する4編を収めた連作短篇集なのですが、「学園ミステリ」と言うジャンルに40歳代のオジサンとしては躊躇してしまったのも確か。
すでに主人公の親の世代ですから…。
でも、読み始めてみると、案外抵抗なく、読み進めることができました。
それは、著者が1973年生まれのためか、1980年代に学生であったなら良く知っている(逆に言うと今の高校生は知らないのでは)と思われるネタが散りばめられていたから。
もしかすると、本作品の高校生は(設定は現代ですが)現代の高校生ではなく、もう大人になってしまった世代が思い出として記憶している高校生像なのかも…。
さて、肝心のミステリの部分ですが、これが高レベル。
殺人事件が起きない――いわゆる「日常の謎」を扱ったミステリですが、その謎のユニークさに目を奪われます。
収録順にみると…
1【結晶泥棒】
化学部から劇薬を使った結晶体が盗まれた…。犯人の目的は?
2【クロスキューブ】
全面真っ白のルービック・キューブ。その解法は?
3【退出ゲーム】
即興劇の名前だが、必勝策とは?
4【エレファンツ・ブレス】
幻の色とされているが、どんなものなのか?
いずれも、謎の部分だけ取り出すと、今一つ分かりづらいと思いますが、巧みなストーリーによってたちまちのうちに引き込まれてしまいました。
全作品とも、その解決部分が巧妙に張られた伏線を見事に回収し、かつ意外性も十分。
中でも3と4は、「学園ミステリ」と言う枠を突き抜けて、思いがけない広がりが、謎の解明の果てに待っている、奇跡的な傑作。
「学園ミステリ」でこれほど感動出来るとは思ってもいませんでした。
本作品は「一年生」の時代を描いたものとのことで、「二年生」以後を描くであろう続編も、期待大です。