日本公開は1976年。
既に30年以上も昔のフランス映画ですが個人的にはトラウマに近いインパクトを受けた作品です。
1944年のフランス。ナチス侵攻が迫る中、外科医ジュリアン(P・ノワレ)は妻のクララ(ロミー・シュナイダー)と娘を故郷の田舎に疎開させることにします。
ジュリアンはその村の名家の出で、古い城を所有しているのでした。
いよいよドイツ軍の軍靴の音が近づいてきた、週末、ジュリアンは村へと向かいます。
しかし到着した村にはドイツ軍の先遣部隊の姿が…そして駆け付けた城で彼が目にしたものは・・・。
私の中での本作の位置づけはペキンパーの「わらの犬」とほぼ同格。
ただ、アメリカ映画の乾いたタッチとは異なり、じっくりと主人公の心情に寄り添う演出がなされている分、感情がかき乱される度合いはこちらの方が大きいかも知れません。
非エンタティメントよりなそのアプローチを良しとしないビューワーもいらっしゃるでしょう、しかし見れば分かるのだがその悲劇的な展開も壮絶なヴァイオレンス描写もちゃんとメッセージの手段であることが伝わって来ます。
そこが「暴力」を娯楽要素として利用するだけの昨今の映画とは大いに違う部分でしょう。
温厚で善良ながら冴えない風貌の主人公、ジュリアンが想いを寄せた美しく聡明なクララのハートを射止めるまでの切ないロマンスが前半にじっくりと描かれております。
その部分を冗長と見る向きもありましょうが、フィリップ・ノワレとロミー・シュナイダーという仏映画界の大スター二人の共演ですから、しっとりとした情感が息づいており申し分ありません。
この展開からは戦争の非道さを描いた、ともすれば気が滅入るような作品であるとの印象を受けるかも知れません。
実際、そのとおりではあるのですが、この映画に対して私が複雑な気持ちになるのは後半のシークエンスの描かれ方にあります。
ジュリアンは城を占拠したドイツ軍の部隊に対してたった一人で復讐のための「戦争」をしかけてゆくのです。
手にしたのは「古い猟銃」(原題です)一丁。
圧倒的に不利な状況ではあるのですが彼は幼少期を過ごしたこの城を文字通り隅から隅まで知り尽くしており、地の利を生かしてゆきます。
古城にはつきものの「隠し扉」「抜け穴」「秘密の通路」それらを利用して神出鬼没のゲリラ戦を繰り広げてゆくのです。
誤解を恐れずに言えばこの部分が「滅茶苦茶に面白い」。
気弱な一人の男が復讐に燃えて巨大な敵に戦いを仕掛けるという、ちょっとゲーム感覚も感じさせるエキサイティングな展開になっているのです。
ドラマ部分の悲劇性の大きさと「アクション映画」としての完成度の高さによってちょっと他に類のない印象の作品になっております。
ただ、結末のつけ方にはやはりヨーロッパ映画らしいシリアスさが漂っており、けっしてエンタティメントに流されてはおりません。
この「筋の通し方」もスゴイっす。