“叙述ミステリーの第一人者”“語り(騙り)の魔術師”折原一の49作目の最新刊は、’95年の『誘拐者』から始まり、累計50万部を突破したといわれる<XX者>シリーズの書き下ろし長編である。これまでの48冊を全部読んでいるファンとしてうれしいことに’10年は4月に、過去の<樹海>シリーズの焼き直しとは言え『赤い森』が上梓されており、’07年以来久しぶりに1年で複数冊の折原作品を堪能することができた。
「昼は美人OL、夜は売春婦。二つの顔を持つ女―丸の内OL殺人事件」。’97年3月に実際に起こった「東京電力OL殺人事件」をモチーフにして、全編にわたり独特の“折原ワールド”が展開される。
ノンフィクション・ライター笹尾時彦はこの事件を次の作品の題材として興味を抱き、殺されたOLの生い立ちから30才の現在に至る取材を始める。第1章から第5章までは彼の直接・間接の関係者インタビューが続き、やがて過去に彼女に関った人たちが不審な“事故”で怪我をしたり、命を落としたりしているのを知る。そして第2の殺人事件が・・・。
インタビュー証言に巧妙に仕組まれた“叙述”の仕掛け。何者か分からない「幕間」のモノローグ。二転三転するプロット。人間入れ替わりのトリック? 過去と現在が激しく交錯する最終章。意表をつく真犯人とその動機。折原一ならではの、本領が遺憾なく発揮されたフィクション・エンターテインメントに仕上がっている。
なお、現実の事件の顛末・経緯は佐野眞一のベストセラー・ノンフィクション『東電OL殺人事件』(新潮社、’00年)、『東電OL症候群』(新潮社、’03年)に詳しい。私もかつて読んだが、本書と併せて読むと一層臨場感が高まり、興味がわく。