私にとって子供と見に行く映画「ドラえもん」の脚本家としての印象の強い著者。
こちらのレビューを拝見し、初めて著者の作品を手にした。
現代を生きる悟と美奈子と、美奈子の祖父母の二組の夫婦の手紙のやりとりで全編が展開されている。
手紙という形式をとっているせいか やさしく品のある言葉遣いで綴られている。
始めは「???」の部分も読み進めるうちに明らかになっていき、一気に読まされてしまった。
悟も祖父も互いのパートナーに対しどこまでもあたたかく そして優しい。心一杯 相手を想う。
特に祖父は 漆黒の夜空に澄み渡った朗月のように祖母の心を照らし、支えていこうとする。
男性である著者が描いた2人の男性主人公は ある意味女性の理想像とも言えるであろう。
それに対し、女性陣の行動がいささか共感できない。
美奈子が離婚を切り出した理由もしっくりこない。
何より祖母が事件前に取った行動そのものが理解できない。
なぜそこに走ってしまったのか。それが「業」というものなのか、私にはわからない。
結果、女性陣の心の奥底に寄り添うことができなかった。
しかしながら 手紙という手法のみでここまで読み手を惹きつける手腕はさすがである。
一読の価値はあると思う。読まず嫌いは勿体無い。
文庫化され、購入しやすくなった今、読もうかどうか迷っていた方も読んでみたら如何だろう。