上野英信さんの往年の力作が復刻されました。
上野英信さんの炭坑関連のルポは、取り上げられるトピックといい、現在から眺めれば、“民俗学”的な
読みも可能ですけど、そうした読みには個人的に抵抗あり。
私たちが特に疑問もなく日々享受しているこの豊かな日本を作る基礎には、かくも理不尽で悲惨な
現実があったということ、愕然とします。
産業構造の変化を背景に、日本の産業化を支えた炭坑の実態に、消滅してしまうギリギリのタイミング
で克明に迫ったルポ。難しい理屈はなく、徹底したルポであるため、その悲惨さや辛さが、読んでいて物
理的に痛いほど。
いったい労務管理側は、どうしてかくも鬼のような振る舞いが可能だったのか、実に謎です。
とか言いつつ、悲惨な実態 + 監督側の鬼っぷりは、一時期の外国人労働者の件や、近年の非正規
労働の問題(いや正社員だって過労死寸前とかも含めて)が即座に連想されます。
って思ってみれば、企業に自身を委ねて楽観的な将来像を描けたのは、団塊の世代を中心とする高度
成長期のごく一部の特殊な事例でしかないのかも知れません。
労働者は、理不尽に身ぐるみ剥がされるのがデフォルトなのかも(嫌)。
『地の底の笑い話』の復刻も希望中。
【蛇尾】
資本主義のおかげで世界は豊かになりました(もちろん反論を十分の承知の上、あくまで全体として)。
豊かさとは心の豊かさであるだの、自然と共生のロハスでスローな生活だの、消費文化に毒されていな
いの人の無垢な眼差しだの、そうした言説は、自分の日々の生活がどんな基盤に立っているかを顧慮
しない、極端に視野の狭い(文字通りの)現実逃避であると思っていて、憎んですらいます。
だけど、そうであっても、一定の資本が蓄積されるまでの時期には、なんとも悲惨な実態があったことも
否定できず、憎んですらいるディープにエコロな言説には、正面切って反論しにくかったりしますが。