本書は数多くあるスマートグリッドの本の中でもとくに最近の海外の実証プロジェクトの動きを著している点で興味深い。とくに欧州のスマートグリッドのプロジェクトの例を数多くあげているし、単なる学識経験者の書くような「べき論」でもない点が特徴だ。
スマートグリッドは米国でスマートメーターを包括するシステムとして登場し、欧州では地域コミュニティを主体としてさまざまな実証が行われている。またスマートグリッド自体、送電系統の上流部分と下流部分に分けられる。最近ではその下流部分の議論が細分化し、再生可能エネルギーでとくに家庭分野での分散型エネルギー源とのインテグレーションのシステムの展開が多いが、本書ではその内容を分かりやすく紹介している。
しかしながら我が国では電力会社やガス会社の垂直統合、家庭分野での地域独占が長年続き、世界のスマートグリッドの潮流とは異なる動きだ。だから日本型スマートグリッドと呼ぶ向きもあるが、日本型やオールジャパンと言ったとたんにガラパゴス化する危険がある。
本書ではおそらく、そういった日本での議論や日本での実証プロジェクトと、海外のプロジェクトとの違いを明確にすることで、本質からかけ離れた日本でのスマートグリッド「議論の迷走」を言いたかったのではないだろうか。