本書は、いわばダーウィン医学の入門書である。
近年は医学研究でも生物進化が考慮されるようになってきており、このような一般に分かりやすい本が翻訳でもちらほら出てきていることは喜ばしい。
多くのレビューアーが書いているように、この本で触れられているトピックには極めて興味深いものも多い。
たとえ現時点では十分に検証されていなくても、仮説として十分に価値のある話もある。
しかし、それらに対する筆者の解釈は、しばしば不適切であり、それが気になって読み進めるのが辛かった。
進化を扱っているにもかかわらず、筆者の進化に対する理解にはかなり問題があるからである。
生物進化の研究を志すものであれば、修士課程の大学院生でもしないような(したら馬鹿にされてしまうような)間違いがいくつもある。
たとえば、しばしば単純な群淘汰論に陥ってしまうことなどである。
本書が取り上げているトピックスは面白いので、そこに期待するのであれば良書である。
しかし、筆者の解釈を無批判に受け取ってしまう人にとっては悪書となるだろう。
読者を選び、読者に注意を要求する作品だと思う。