現代より1世紀ほどの未来。主人公でジャーナリストのサエバ・ミチルと、パートナーのロイディが今回訪れるのは、海原に浮かぶ城塞都市「イル・サン・ジャック」だ。一夜にして海に取り囲まれたという伝説があるこの街は、女王メグツシュッカのもと、外部との接触をほとんど拒否している謎めいた街である。宮殿を取材で訪れたミチルたちの前で、僧侶クラウドの首なし死体が発見され、ミチルが犯人と疑われてしまう。
今回の舞台となる城塞都市も、美しい女王が統治する平和で豊かなユートピアだが、同時に中世のイメージ漂う閉塞した世界でもある。しかし前作といささか趣が異なるのは、殺人事件そのものはあまりストーリーの根幹に関わらないといった点だろう。それよりはむしろ、都市自体を動かす社会システムの秘密や、「肉体と精神の関係」といったような哲学的なテーマがこの物語を色濃く覆っている。殺人事件の真相も、そしてミチル自身の秘密もその延長上で静かに語られ、やがてその謎が解き明かされていく。すべてが白日の下にさらされたとき、この作品を単純にミステリーと呼んでいいのか。形而上学的な内容と雰囲気、そしてそれらを形作る透明で詩的な文体が、読み終わった後にそう問いかけてくる。(文月 達) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
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13 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
森博嗣の世界観がたっぷり,
By
レビュー対象商品: 迷宮百年の睡魔 (バーズコミックススペシャル) (コミック)
前作「女王の百年密室」に続くスズキユカによる森博嗣シリーズ第二弾。このミチル&ロイディシリーズにぴったりの絵柄と、その混沌と謎を表すシンプルでありながら美しい魅力があります。元々の原作を知っていても、ああ、あの建物はこういう雰囲気だったのかーっと改めて考えたり、分かりにくかった未来的システムを如実に表してあるので非常に入りやすい世界観です。森博嗣ファンなら一度読んでみるといいと思います。 スズキユカさんのHPではこの製作過程が公開されていますよ。
11 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
世界の謎を解き明かせ,
By カスタマー
レビュー対象商品: 迷宮百年の睡魔 (単行本)
約100年後の世界。海原の長い道の先に浮かぶ城塞都市「イル・サン・ジャック」。その宮殿への訪問者、サエバ・ミチルと相棒ロイディの前に現れる、不可思議な死体。事件の謎が解かれる時、この小さな王国の秘密も明かされる。街が謎。人が謎。「キノの旅」なんかが好きな人は、きっと気に入ると思います。 幸福な人工の楽園で、人間の「生と死」の意味を容赦なく問う前作「女王の百年密室」で残された謎も一部明かされるので、可能なら前作もぜひ。傑作です。
17 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
近未来ミステリ,
By
レビュー対象商品: 迷宮百年の睡魔 (単行本)
まず最初に,本書は「女王の百年密室」の続編としてかかれてるのでそちらを先に読まれることをおすすめする.前作同様,サエバミチルが主人公であり今回も新たな街を訪ねて不思議な事件に巻き込まれていく.森氏独特の未来感やロボット(機械)に対する考え方が非常に良く出た本であり,それがこの本の最大の特徴でもあり魅力でもある.しかもしっかりとミステリとしての面白さも盛り込まれているところがこの作品のすごいところ.
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