迷宮とは、一般には、一度迷い込んだら出てくることの不可能な空間のことを指しますが、岡本太郎は、私たちの存在そのものが迷宮であるとともに、私たちが生きる現実も、悩み壁にぶつかりながらさまよう迷宮なのだ、と説いています。そして、この迷宮のなかでは、危険な道を選んでこそ無限な夢が広がり、素晴らしい幻想的な姿が開かれるのだ、と語ります。迷宮の中でこそ、人は自己の運命を凝視し、生命が湧きあがり、燃えあがるというのです。このまま実践するのは簡単ではありませんが、純粋でエネルギーにあふれた人生論だと思います。また、太郎氏は、縄文やケルトの組紐文の芸術性を先駆的に高く評価しましたが、それは、そこに迷宮の世界観や運命感が表出されていると彼が正に感じたからでした。人生そのものを迷宮と見る、など自分などには全く意外で、思いもつかない見方をしていた岡本太郎の繊細で深い感受性に触れられたと思った書でした。