ここで描かれる若者というのは、「平均的な若者」と言えるのだろうか?
読んでいて、何よりも感じたのは、そのことへの疑問である。
というのは、著者の調査の仕方というのは、街頭で若者に声を掛け、インタビューをする、というやり方だからである。あなたなら、見ず知らずの人にいきなり声を掛けられて、インタビューに応じるだろうか? 自分なら、何かの勧誘と疑って無視するだろう。実際、そのように断られることが多い、というのを著者自身が序文で述べている。
となれば、著者のインタビューに応じた若者というのは、特殊な存在である可能性を捨てきれない。
本書のインタビュー内容として紹介されるものは、数多くのやりとりの中から「印象的なもの」を並べた感があり、そのやりとりが実際にあったとしても、それがごくごく普通に見られることなのか、それとも、特殊なことなのかもわかりづらい。
さらに、以前がどうだったのか、についても著者自身の個人的な経験や、こうだったと言われている、などばかりで、それが正しいという保証はない。つまり、比較になっていないのである(例えば、東京近郊の若者がローカル化し、行動範囲が狭くなっている、というのだが、上の世代の人たちは本当に行動範囲がそんなに広かったのだろうか? 松戸の女性が、休日は地元で同じように過ごし、新宿にすらいかない、という話が出てくるが、距離的に近くても、用がない場所には行かないのではなかろうか?)
本書で行われている調査のやり方というのは、社会調査のやり方で言うところの「質的調査」のやり方である。質的調査の結果を、一般化するには、細心の注意を払う必要がある。しかし、本書は極めて杜撰に一般化してしまっているケースが目立つ。
著者のインタビューに応じるような若者はこういう人だ、という風には言えるかも知れないが、これをもって、若者全体を語るのは危険ではないかと思う。