時間・空間内で一意的法則に基づいて事象を記述する近代科学は、
人間の意識とは独立に、外界の「もの」の世界の存在とそのなかに張りめぐらされた法則の存在を認めるマルクスの立場(唯物論)と通底するが、
元来は、創造主たる神への信仰がもたらしたヨーロッパ文化圏の臆見 ― 神のオーダー(命令)で世界にオーダー(秩序:自然法則)ができた ― だったのである。
ここに、自然の中には秩序があり、法則が貫いているのだというドグマが誕生した。
混沌を秩序へと凝縮させる機能を持つ創造力の作動過程 ― 科学理論の形成過程 ― に、合理的な説明など不可能である。
科学理論の形成過程には、心も含めて全人間的営みが作用しているにもかかわらず、科学的分析の場面では、心そのものの排除に全力を尽くすからである。
科学理論の変遷とは、新しい事実群の発見という知識の蓄積作業によって、真理へと連続的に漸近していく過程ではなく、
旧来の事実群を別の概念枠で再編成するという意味の世界(「規約」)の組織換えであり、不連続な変革 ― 革命 ― の歴史なのである。
キリスト教的世界創造信仰としての合理的世界秩序への信頼(16-17世紀:ガリレオ、ケプラー、ニュートン)が、
18世紀において「百科全書派」を筆頭にキリスト教的宇宙観からの解放(「聖俗革命」)へと変革し、
19世紀に至り、ようやく今日の無神論的力学的世界観、即ち近代科学としての体裁が整ったのだという解説も含め、著者には教えられることばかりであった。
『新しい科学論』『科学のダイナミックス』との併読をオススメする。