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近代日本の右翼思想 (講談社選書メチエ)
 
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近代日本の右翼思想 (講談社選書メチエ) [単行本]

片山 杜秀
5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
価格: ¥ 1,575 通常配送無料 詳細
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商品の説明

内容説明

ごく少数の異端者を除き皆が右翼だった時代北一輝から簑田胸喜まで、そして西田幾多郎から長谷川如是閑まで。大正・昭和前期の思想の系譜をたどり、総無責任化、無思想化へ向かう近代日本思想の極北を描く

登録情報

  • 単行本: 252ページ
  • 出版社: 講談社 (2007/9/11)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4062583968
  • ISBN-13: 978-4062583961
  • 発売日: 2007/9/11
  • 商品の寸法: 18.6 x 13 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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44 人中、37人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
「目の覚めるのような」という表現はこうした作品にこそ捧げられるべきかと思う。

まず驚かされるのは、四章構成の各章のサブタイトル−「世の中を変えようとする、だがうまくゆかない」「どうせうまく変えられないならば、自分で変えようと思わないようにする」「変えることを諦めれば、現在のあるがままを受け入れたくなってくる」「すべてを受け入れて頭で考えることがなくなれば、からだだけが残る」−に濃縮された明快なパースペクティブだ。

「未来」に賭ける「左翼」。「現在」を肯定する「保守」。「過去」へと反り返る「反動」。政治思想をさしあたりそのように大別できるにせよ、実際に生起する思想はしばしば接合と分離を繰り返し、複雑怪奇な様相を呈して止まない。とりわけ右翼思想は、微温的な道徳訓から破壊的なテロリズムまで、農本主義から軍国主義まで、教養主義から反理性主義まで、およそ正反対の要素が「右」の名の下にいとも簡単に同居する。

そうした右翼思想のアクチュアリティに分け入るべく、狭義の政治思想のみならず文学・芸術作品までを視野に収め、縦横無尽な論述が展開される。その博識と慧眼は尋常ではない。ときに難解きわまりない哲学談義を一刀両断に命題化し、ときに罵詈雑言から一貫するロジックを抽出し、ときに、長谷川如是閑、西田幾多郎、阿部次郎など、いわゆる「右翼」とは考えられない論者からも思想的連関を発見する。

その結果見出されるのは、「ものの考え方に全体の構造としてうまくゆかないところがあり、その中で堂々巡りをしているうちに、奇妙な想念にどんどん流されてしまう」という右翼思想の姿、そしてそれが一部の論者や作品に顕著に見出されるばかりでなく、近代日本の思想風景全般に関わり、そしてその構造は今なお残響しているという認識である。

「美しい国」を掲げる政権の崩壊を目の当たりにした現在、本書の射程は皮肉なまでにアクチュアルだ。
このレビューは参考になりましたか?
15 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本|Amazonが確認した購入
戦前日本の右翼思想を扱った研究書である。日露戦争後、明治国家体制が弛緩し、伝統的価値が崩れるなか、保守的右翼と違って変革志向の強い「超国家主義」が登場した。しかし超国家主義は、変革のシンボルと仰ぐ天皇が同時に現体制の中心でもあるため、変革の思想としては腰砕けになった、と著者は言う。変革が腰砕けになると、現状をそのまま正当化するイデオロギーが必要となり、「教養主義的」右翼思想や、ありのままの現在への没入を説く独特の時間論が登場する。さらに、現状に満足し、考えることがなくなると、右翼思想は身体論という形をとったという。本書は以上のような見取り図に従って、戦前期右翼思想のたどった「ライフサイクル」を通観したものである。

過剰な専門化で全体像が見えない研究書が多い中で、著者が大きな見取り図を提供しようとしたことは評価できる。しかし、本書の議論はあまり説得的とはいえない。それはなぜか。第一に、様々な思想潮流を大きな見取り図にはめ込んで解釈しようとする結果、テキストの分析よりも解釈が先走り、個々の思想の解釈に無理が感じられる箇所が多々ある。特に右翼と時間論、右翼と身体論の箇所は牽強付会の議論も多く、眉唾ものだ。

第二に、本書の解釈図式にも無理がある。超国家主義は天皇解釈をめぐって躓き、「変革」思想として機能しなかったと著者は言う。しかし本当にそうか。新体制運動に結集した国家社会主義者は、地主や株主の権利を制限し、官僚主導型の体制を築く一方、国際的にも現状打破を掲げて枢軸国と連携した。これは大きな「変革」ではないか。著者が主に論じている国粋主義者たちも、その好悪は別として、日本の思想的空気を変革し、自由主義や社会主義を追放することに成功した。急進的超国家主義が「成功」している以上、変革の挫折に始まる右翼思想のライフサイクル論もやや疑問に思える。

そもそも、近代日本の右翼思想を、世界史的脈絡を無視して、自己完結した過程として論じることには無理がある。ドイツやイタリアを見てもわかるが、戦間期の急進右翼勃興の一つの原因は自由主義の危機、いま一つは共産主義の勃興に対する危機意識であり、この点は日本でも同じだろう。日本の研究は日本を見ていれば出来るというものではない。外の世界に目を向けなければ自国も本当には見えてこない。

著者は音楽評論も手掛ける間口の広い研究者で、その博識の一端は本書でもうかがえる。しかし、本書を読む限り、著者の近代日本史理解は図式的で平板な印象を受ける。少なくとも、本書は近代日本の外交史や政治史を深く勉強した人の書いた文章ではない。最近の日本映画やドラマで、旧帝国軍人がリアルに描かれているのを見ることは稀だが、本書から受ける印象もそれに似ている。無意識のうちに戦後的解釈が入りすぎて、時代の真実に迫り得ていない、そんな印象なのだ。
このレビューは参考になりましたか?
13 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
 「あとがき」の「右が好きだった私としては、もちろん右翼の魅力を語りたい気持ちも強い」っていう言葉に対しては、「その思い、愛はちゃんと伝わってるよー」と返したい。いやぁ、とても刺戟的な本だった。
 「ものの考えかたに全体の構造としてうまくゆかないところがあり、その中で堂々巡りをしているうちに、奇妙な想念にどんどん流れてしまう」っていう近代右翼思想の潮流がとってもうまく整理されていて、ほんとうに面白かった。「未来にぶらさがって現在を攻撃する左翼に対し、過去や現在に足場を置くのが右翼」とか、「反動は過去に反り返って動く。保守は現在を大事にする。左翼は未来に期待する」とか、そういった素人語りって「講談社選書メチエ」という一般書とは言え、なかなか扱いがイデオロギーだと、学者は言い切れないもんだと思うんだよね。全編を通じて、著者の潔さ、キレの良さを感じる。
 「どうせうまく変えられないならば、自分で変えようとは思わないようにする」安岡正篤の存在にフォーカスしてページを割いているのが新鮮。理想の右翼と現実の右翼のジレンマっていうか。
いずれにしても、そのジレンマっていうかねじれの根幹に「天皇」があるっていうね。
 本書は一応、1945年の敗戦に至る近代右翼思想について書かれている訳だけど、昨今の、よしりんとか、新しい歴史教科書をつくる会とか、「Will」とか、ネット右翼とか(十把一絡げにする訳じゃないけど...)の心情ってのも、決して戦前と切れている訳じゃないっていうか、右翼の根本問題はいまだ解決されていないっていうか。
 それにしても、石原莞爾「世界最終戦論」の「今から三十年内外で人類の最後の決戦の時期に入り、五十年以内に世界が一つになる」なんて世界観は、経済に舞台を変えた今のグローバリズムってやつと寸分変わらない気がするな。
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