1960年代の初め、超常現象や超心理学(パラサイコロジー)のちょっとしたブームがあった。1961年に出版された宮城音弥著「神秘の世界 ―超心理学入門―」(岩波新書)は小冊子ながら当時の超常現象に対する概念を整理する上で決定版といえた。本書巻末に付された年表を見ると、1963年は大谷宗司氏らによる「超心理学研究会」が設立された年にあたる。
それから半世紀近くたった現在、三浦氏による本書が出版された。宮城氏の著書は、超常現象に対する科学的な取り組みとして、米国デューク大学のライン教授らの研究をベースとしていた。本書は、過去の霊能者の紹介などについては、宮城氏の著書に比べて特段の新しさはないが、これらの現象を文明史的に論じているところが素晴らしい。このような超常現象は1800年代半ばに米国に現れて英国で特に研究された。なぜこの時期にこのような現象が起ってきたかは、勃興しつつあるダーウィニズムや唯物論に対して従来のキリスト教が対応できなくなってきたことが基盤にあるようだ。欧米のスピリチュアリズムは、単に心霊現象ブームといったことではなく、また科学的な衣を付けた超心理学で割り切れるものではないことを著者は教えてくれる。
表題のフレーズは、宮城氏の上述著書の冒頭に記されたものであり、私事ながら「アプリオリーに何者をも否定せず」を処世訓にしてきたものである。しかし、近代スピリチュアリズムの理解には、科学だけでなく、文明史的な視野が必要なことが痛感された。巻末に付された年表はその点で大いに参考になる。