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本書は、海外の理論家の著作を説明しながら記述が進むという、この著者の多くの著作に共通するスタイルで構成されている。その説明は妥当であり、現代思想にかんする充実した理解にたいして羨ましく思えるが、ややもすると「説明の切り貼り」になってしまうところが玉に瑕である。
本書についても残念ながらその傾向があるように思う。アレント、フーコー、アンリ・ドマン(たしかポール・ドマンの兄)、ハーバマスなどが論述の基礎である。
その他にもさまざまな理論家が出てくるが、要するに、古代から近代、そして現代へと、労働にたいする観念や解釈図式の変遷を、理論家の著述をもとに整理したものが本書であり、その整理ぶりが賞賛に値するものであっても、その反面、主題にたいする著者独自のつっこんだ検討は少なく(あえて挙げれば第四章の対他欲望の部分だが、これもジラール、ボードリヤールやその他そこで挙げられている理論家の議論が透けて見える)、「読んで目から鱗が落ちる」という類の本ではない。隔靴掻痒というのが正直な感想である。
(イメージメイキングすると、強打者が並んでいるのだが、イマイチつながりが悪い野球チームのような印象だ)
そうはいうものの、この本は労働観を主題とした数少ない本であり、またすぐれた教科書ではある。これだけコンパクトに、さまざまな理論家の著作をひとつの主題にまとめることは、誰にでもできることではない。読んで損をする本ではないので少しでも関心のある人は是非読んでほしい。アレントに興味がある人や、労働について考えている人にもおすすめである。
また、このレヴューに興味をもった人は、同じ岩波新書に入っている見田宗介の『現代社会の理論』(や見田の他の著作)もあわせて読むとよいと思う。
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