辻静雄の伝記的小説『美味礼賛』を読んで以来、辻調理師専門学校に興味をもった。料理のことなどとんと分からないが、思わず本書を手にとってしまった。
「他人に盗まれないように技術を隠す」のがかつての料理人の常識だったというが、それとは対照的に知識を出し惜しみしない辻調の姿勢にはとても好感が持てる。しかもその知識は、たとえば西洋料理なら本場フランスで得てきた本物であるから実にたのもしい。
素人の私でも本書があればおいしい料理ができるんじゃなかろうか…などと勝手に想像しながらレシピを味読している。
肉、魚、パスタ、スープなどの各料理について、欠かすことのできない「公式」が随所にちりばめられている。
たとえば、肉を焼くときは焼くのにかかったのと同じだけの時間、温かいところにおいて寝かせるのが「おいしさの公式」であるという。
なお、辻調には料理史研究のバックボーンもあるようで、純粋に読み物としてもそこそこ楽しめると思われる。
それにしても、ちくま文庫はなかなかおいしい所をついてくる。
全四巻のシリーズとのこと。「日本料理」編も買ってしまう気がする。