「ミスター円」の元大蔵官僚のエコノミスト、青山学院大学教授による日本礼賛本。他の本では日本の没落を警告しているようだが(未読)、震災後に緊急出版された本書では日本の素晴らしさを訴える。
ただ、他の著書に比べると、専門性がないためか底が浅い。そもそも内田樹(著者の高校・大学の後輩だ)の「日本辺境論」にインスパイアされ、「西欧から見れば辺境である日本文化は素晴らしい。逆に辺境が中心に影響を与えはじめている」という趣旨で書かれているのだが、日本文化の素晴らしさ、特徴についてはは梅棹忠夫「文明の生態史観」や松岡正剛の著作などの引き移し。影響といってもスシが海外で受けている、くらいしか事例がないし…
やたら食文化に関する記述が多く、日本列島は寒流と暖流がぶつかる場所で、魚類の種類が豊富、西欧に比べると魚料理が充実している…などこれも各専門書の引き移し。自分では読まないような知識で、これはこれで面白かったが経済学者の書いた本を期待した向きにはいささかがっかりかも。
説明するのは抜群にうまく、きっと大学では人気教授なのだろうが、自分ならではのテーマ性がないことがここで露呈してしまった。官僚的頭の良さとは先人や海外の専門家の言をうまくexcerptして編集する能力なのだろうか。講演会なら充分楽しめる内容だろうけど。