農薬の普及、堆肥利用から化学肥料への転換、圃場整備による用排水路のコンクリート・パイプ化と河川と水田の連続性の分断等、農業経営の近代化に伴って「かつて農業・農村が育んできた生物多様性の体制は崩れてしまってきたp.11」
しかし、それを「取り戻そうとする動きもみられる。そうした行動を突き動かす原動力は、感動と危機感の双方であるp.16」
「近年は里山の雑木林を対象とした市民参加型の維持管理などの活動が全国各地で活発化しているp.36」「日本のsatoyamaが特別なのは、「社会と生態系から生み出される景観」に関する認識を広める国際的な旗手になりつつあるからである。P.39」
こうした動きの中で「生物多様性を保全する手法として経済的手段が注目を集めている。すなわち、生物多様性を守れば守るほど利益が得られる仕組みを導入することで、開発業者や地域住民が自発的に生物多様性を守ることを促すという経済政策である。p.41〜42」
こうした手法として「生態系サービスの受益者が、生態系サービスの対価を支払う制度(Payment for Ecosystem Services:PES)が世界各地で導入されている。世界全体では、PESの導入事例は300件を上回るといわれている。p.43-42」PESには、受益者が自発的に資金を提供する、政府が中心となって資金を提供する、PESに類似した森林環境税等の仕組みの3種類がある。また開発により失われた自然を「他の場所で自然を再生することで失われる自然の代償とするp.45」生物多様性オフセットという仕組みもあり、「アメリカでは環境アセスメント制度の中で実施されており、すでに数十年の歴史があるp.45」
今回の生物多様性の特集は個々の取り組みよりも、全体の枠組みや国際的な動きを紹介しており、国際的な動きのイメージがつかめるという点で良い。
ただ、個々の論文が短いので、つっこんだ議論や事例の紹介は無い。
COP10(生物多様性条約会議)においては、途上国における遺伝資源の活用について利益を得た先進国からの利益配分を行う仕組み作りについて、途上国と先進国の対立があり、話し合いが進展していないことが主に取り上げられているが、これについては単なる利害対立ではなく知的財産権を保護する仕組みと整合性の問題が大きく絡んでいる点をもっとつっこんで取り上げてもらいたかった。