小説上巻のすべてに該たる9話まで視聴済みでの感想です。
今のところ、文章と映像という媒体の違いによる演出効果の差はあれど、概ね主軸となるストーリーの流れは同様です。(小説とアニメでは結末を変えるという噂も聞いたので、中・下巻がどうなるかは分からない。)
元来あまりアニメのノベライズ作品(小説の方が原作の場合は別にして)を買うほどの入れ込みは無く、この本も購入予定ではなかったのですが、ひょっとしたらアニメ以上かというぐらい既読者の評判がすこぶる良かったので、思わず興味を引かれて買いました。
なるほど、確かに良い出来です。アニメファン用の関連品としてではなく純然たる読み物としても、十分に楽しめる作りです。アニメ作品のノベライズというと、軽薄で読みづらい独特のラノベ文体なのではないか、との先入観で敬遠している人もいるかも知れませんが、普通に一般小説と同様でしっかり読ませる文章の筆者さんです。コミカルな描写が多いアニメ版に比べて、小説版はよりシリアスな切り口で、全体的にしっとりと少女的な耽美さや翳りが漂っている雰囲気でしょうか。
アニメの方は、奇抜な演出が反りに合わなかったり、1クール物が多い近年の中での2クール物ということもあり展開が冗長に感じてイライラしている人もいたりして、賛否両論のようですが、そういう「自分には受け付けない」という側の人でも、逆に小説版の一気読みなら印象が変わるかもしれません。
小説版上巻は、基本的に晶馬が一人称の語り部役です。
各登場人物の心情や行動背景について、映像だけでは表現しにくい部分も地の文での言及が詳しく、感情移入しやすい構造になっています。目立った活動のある兄達に比べて動きの少ない陽毬の気持ちや、行動に謎の多い冠葉の内心、苹果と晶馬が徐々に親しくなっていく過程など、丁寧で細やかです。
人物達の会話の後ろで無関係に繰り広げられている、動画的に面白いペンギン達の自由奔放な悪戯は、ストーリー進行に必要なとき以外はあまり出てきません。度肝を抜かれた人の多い「生存戦略」のシーンも、アニメのトレースではなく、陽毬の趣味を反映してか女の子らしい小物を散りばめ、文章は文章として突発的な異空間の出現を感じさせる演出をしています。9話の図書館は、アニメの方は意外と無機的でメカニックな要素もありましたが、小説の方がレトロな書庫の匂いと超重力的な不思議空間のオーソドックスな幻想仕立てになっていて、個人的にはこちらのほうが好きです。