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軽蔑 (角川文庫)
 
 

軽蔑 (角川文庫) [文庫]

中上 健次
5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

新宿歌舞伎町のポールダンスバーの踊り子、真知子と、名家の一人息子として生まれながら、上京しヒモになっていたカズ。熱烈に惹かれ合った二人は、故郷に帰って新しい生活を始めるが。

内容(「BOOK」データベースより)

好寄に満ちた視線が行き交うトップレス・バーで、真知子はただ一人の男を思い、踊る。カズさんとの交情は、潔らかで高貴だった。得体の知れない熱い血が突き上げる―。恋に落ちた二人はヴァレンタインの夜、警察の手入れで逃げ出し、カズの故郷へと向かった。夫婦となり、新生活が始まるが、閉塞感と運命は、二人を否応なしに試練へと導いてゆく。惹かれ合う男と女の本能を、異才・中上健次が描き尽くした究極の性愛の物語。

登録情報

  • 文庫: 462ページ
  • 出版社: 角川書店(角川グループパブリッシング) (2011/3/25)
  • ISBN-10: 4041456126
  • ISBN-13: 978-4041456125
  • 発売日: 2011/3/25
  • 商品の寸法: 14.8 x 10.6 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
レビューを読むと評価が極端に分かれているが、私自身は心を揺さぶられるような思いでこの小説を読み終えた。主人公真知子は恋人カズさんに「五分と五分」の関係を求めるが、その背景にあるのは、雑多な人々が暮らす東京で誰に支えられるでもなく、たったひとり、自分の体ひとつで生きてきたという自負と孤独感だ。自分のことを「天女」という真知子はしかし、その立ち位置が東京でしか通用しない儚いものであることを自覚し、恐れている。東京では「紳士と淑女」の男と女が、ひとたびカズさんの田舎に行けば御曹司とストリッパーの関係となり、そのことが逆に真知子に「五分と五分」へのこだわりを強めさせ、ふたりを破滅へと向かわせていく。真知子は「五分と五分」ではなくなりつつある二人の関係に焦燥感をつのらせながら、カズさんを裏切る行為を重ねるが、それでもなおカズさんを思う愛情の深さ、強さ、その質量に圧倒される。自分の命を削るようにして人を愛し、男の運命を自分の運命として受け入れ、恋人が傷ついたなら自分も同じように傷つきたいと願う女の、生々しい生命力に満ちた小説だと思う。
このレビューは参考になりましたか?
16 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
中上の文章は、何故こんなに人の気持ちを探るのだろう。
そう感じてやまない作品のひとつである。
独特の粘っこさ、下手すれば長々と続く連載向きの物語なのだが、
痛いほどリアルな女の主人公を強い洞察力で描かれてるので
読み手に様々な情を持たせる。
ストリッパーの主人公と田舎ボンボンの暴走族兄ちゃんの恋愛逃避行生活は、

純粋な気持ちのまま幕を閉じる。
女の愛し方、男の愛し方、それぞれが一方的なまでに傲慢に激しく描かれて、その二人に意味深な取り巻きたち何人も絡んで、物語を盛り上げる。
女性に読んでもらいたい小説だが、男性にもこれを読んで女性の心とはなんぞやと学んで欲しい。

このレビューは参考になりましたか?
4 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
中上の作品を読み進んでいると、棟方志功の姿が思い浮かぶ。
古い映像で見た棟方の姿は、版木に一心不乱に向き合い、同じ箇所を何回も何回も、執拗に見えるくらい彫りを加え続けていた。
それ自体は人を殺傷すらできる彫刻刀を、まるで本来、人や自分自身の身体を傷つけるために振り上げたものを、そうする代わりに版木に向かって線を刻み、
乳房や女陰など自分の身体に存在しない器官はことさらに強く太く鋭角的に線をくわえ、
そうすることで私たちの観念や想像をはるかに越える像を立ち現れさせる。

「軽蔑」では、“相思相愛の男と女、五分と五分”といった核となる言葉が、他の中上作品同様、技法的に何回も何回も繰り返される。
その言葉が出るたび、私たちの胸中に強く太く描線が刻まれ、
単なる男と女の物語として読み始めた読者の心に、読み進めるうちに、棟方の版画作品のように
聖なるもの俗なるものそのほかのあらゆるものがすべてその強く太い描線によって浮かび出されたかのように、
読者はありふれた男と女の真知子とカズさんに手を合わせ、幸せを祈り不幸を悼み、2人の物語に自分の人生観を濃く重ねることができる。

しかし、私たちのように平凡に日々を安穏と生きる者は、この本を閉じれば、強く太く描かれた物語の登場人物の人生とは明確に区切られた日常空間に引き戻される。
棟方作品に魅かれる者が、仏教界や宗教界に精神ごとどっぷりつかるとは限らないのと同じ。
私たちは、人生について深く悩み、傷つき、死を考える前に、
棟方が自分に彫刻刀を向ける代わりに版木に自分の魂を刻み付けたのと同様に、
この作品を読み進めることで、自分の中の爆発しそうな魂を、本を閉じるのと同時に封じ込めることができるということになるのかなどと考えたりもする。

その一方で中上は、読者が心の中にもつ獣のように暴れる魂を、その一身で肩代わりしたかのように、この作品を書き終えた直後の1992年8月に逝ってしまった。
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