この本とは、たまたま時間つぶしに入った本屋の新刊コーナーで出会った。
表紙の聖山カイラスの写真が目につき、手に取って斜め読みをしただけでこの本がただの旅行記ではないこと
がすぐにわかった。即買いである。
チベット仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教、ボン教の聖地・カイラス山(6656m)。
世界的にも、エルサレムに匹敵する地球上でも第一級の聖地の中の聖地。
ヒンドゥー教徒にとっては、シバ神が住む最高の聖地であり、その象徴であるリンガ(男根)として崇拝する。
敬虔なチベット仏教徒であるチベット人にとっては観音菩薩の化身であり、五体投地でその周囲を廻る。
アカデミー賞映画「おくりびと」の原作「納棺夫日記」の著者が、2003年チベットの最奥に位置するカイラス山
への25日間4千キロの巡礼旅に出た。
ラサから西チベットの辺境カイラス山を経て、カシュガルまでの道は悪路の連続であり、4〜5千mの峠を
いくつも越えていく過酷な旅。
その中で高山病に苦しみながら生と死の本質を見つめた、深い洞察の記録である。
著者は納棺の仕事に携わっていた頃、死者の顔から微光が漂うのを見るようになる。
その光こそ親鸞の「教行信証」に書かれている釈尊の光であり、「チベット死者の書」における死者を涅槃へ
と導く光であった。
あらゆる存在の根底にある仏性の光。
納棺の仕事を辞めて光を見ることがなくなった著者は、再び光を求めて聖山カイラスを目指した。
人の死に関わってきた著者が、やがて古今の宗教書を読むようになり、現在の日本の堕落した仏教に対する
問題意識は、やがて著者をチベット仏教へと導く事となる。
このあたりの意識の流れは、私も大いに共感できる部分が多く、随所に散りばめられた著者の西域や宗教に
関する博識ぶりもあいまって、単なる旅行記を越え読み応え十分であった。
チベットの写真もため息が出るくらい美しく、これは買って損のない本だと思われる。
PS.
この本を買った直後に、インド料理屋のご主人から「カイラスの石」を思いがけずいただくこととなった。
これは、単なる偶然なのか?
これも一種のシンクロニシティといえるのか???
また一つ、何かが大きく動き出したのかもしれない・・・