イギリス人の少女ドロシーは小さな頃からエジプトに引き寄せられてゆく。学校よりも大英博物館が好きで、ロンドン爆撃の中何よりも心配だったのは大英博物館・・・と書くと考古学者誕生物語のようですが、全然ちがうのです。後にヒエログリフを読み、確かな知識を身につけ、セリム・ハサンやアハメド・ファクリーなどエジプトの伝説的考古学者のアシスタントをしていた女性は古代エジプト19王朝のファラオ、セティ1世の愛人の生まれ変わりだった、という・・・と書くとただのオカルトもの?と思われてしまいますが、それも全然違うのです。
1989年に英語版が出版され各国語でベストセラーになっていた本が、やっと日本語で読めるようになりました。正直言えば、英語の本が出たときに少し読んでみました(途中でギブアップ)なにせ英語版表紙がきわめてブキミなので、トンデモ本と思いしまいこんでいました。日本語版読後、そんなふうに勝手に切り捨てていたことをオンム・セティに謝りたいと思いました。セティ1世への献身的な愛に生きたオンム・セティの物語ですが、豊かな古代エジプトの知識を懐に、まさに古代エジプトの世界に暮らした最後の女性のものがたりとも言えるのでしょう。エジプトの歴史をこよなく愛する方々におすすめします。
私の体験で恐縮ですが、30年近く前のある夏、アビュドスの神殿壁画のあまりの美しさに見とれて、思わず触りそうになったところ、ガラベーヤの爺さんがチッチッと舌打ちをしてから言った「これがもしオンム・セティだったらお前は怒鳴られていたぞ」 あ、スミマセンと撤退したことを覚えています(そのときにはオンム・セティは生きていた!)虚実とりまぜて当時のエジプト・ガイド仲間の口の端にのる伝説の人でした。