本書は、「私が私であること」はどういうことか=独在性について、対話形式で書かれた哲学書だ。先生と、12人の学生が、提示された思考実験から、議論を重ねて、哲学していく体裁になっている。
ひとつは、
大林宣彦監督の映画『転校生』と同じシチュエーションで、意識が入れ替わった太郎と次郎(なぜか男同志)。外科医のブラック・ジャックが脳の記憶を交換する手術をするという。はたして、太郎(次郎)は、本当に太郎(次郎)なのか。
もうひとつは、
私をスキャナでコピーし、火星への輸送をおこなうことができる遠隔輸送機がある。コピーした後に、そのまま残ってしまった私と、火星にいった私は、どちらが私なのか。
もちろん答えがあるわけではない。哲学的議論を交わし、深化させていく過程を読み取っていくべきものだろう。
ただし、ここでおこなわれる哲学的議論は、なかなか高度だ。僕の拙い知識レベルと、思考回路では、精読していかなければ、内容についていけないなかった。本書で頻出する(哲学的素人には)聞きなれない用語についても、調べながら読み進めなければならない。それでも、概ね理解という程度なのだ。読了したときの満足感は高いのだが、今後、自己研鑽するなかで、折々に、再読してみると新しい発見があるのだと思う。