タイトルから直接にはイメージできない、誠に凄絶をきわめた物語である。
著者は、応召直後からの絶え間ない上官からの暴力から、彼ら上官を戦場で殺害することを目標に生き延びる決心をする。
だが、撤退の途上において復讐の機会を得たがために、友軍から見捨てられ、3日間にわたり死線を彷徨うこととなる。
その間に人間たちの繰り広げる、ありとあらゆる不道徳が赤裸々に描き出され、目を背けたくなる箇所は数え切れない。
それに対し、軍犬であるローマ号は常に著者の側にあって、何度も生命の危機を救うのである。
そして、自らが死を迎えようとする時もなお、著者と共にあろうとする。
自己保身と欺瞞に満ちあふれた日本軍
常に勝者の側に付き、敗残の日本兵を容赦なく襲うビルマ人
自己保存のために裏切る人間と、常に裏切らない犬との対比が悲しい。
他にも、戦場での兵士について、様々な知見を与えてくれる作品である。
常に復讐を念じていた著者は、自身について「祖国のためという意識はなかった」と述べている。
しかし、日本兵を惨殺したビルマ人ゲリラを殲滅したときの著者は、明らかに日本人としての意識に燃えたぎっていた。
異端の兵士による異端の戦記であるが、得るものが多い作品であると言えよう。