本書は1997年刊行された後一度絶版になりましたが、2009年に文庫版として再刊されました。
メジャーな存在にはなっていないもののSFを読む方であればであったことは一度や二度ではないでしょう。本書を読む遠い未来の夢の乗り物というイメージがありますが、実現への希望を持つことができます。
軌道エレベーターをはじめて科学的に考察されたのは20世紀中頃で、1960年代には工学大学の学生の思考実験が「サイエンス」に掲載されたことが有名だそうです。この当時想定されていた軌道エレベーターは静止衛星を地上方向に限りなく伸ばして静止衛星と地上を結び、その中を乗り物(エレベーター)が移動するというものです。原理的には非常に理にかなったのもので、エレベーターには地球の自転の遠心力が加わるため、それを利用すれば成層圏へ脱出するエネルギーが従来のロケットに比べ劇的に少なくなるというものです。建設にあたっては宇宙空間に飛んでいる小惑星を捕獲してそれを原料に上空からエレベーターを建設するアイディアや、スカイフックと呼ばれる巨大な2枚羽風車のような形体も考案され、エレベーターを建設するに際しての諸問題を解決するアイディアなども出され、私たちが思っている以上に実現が近い乗り物という印象を得ました。
軌道エレベーターが実用化されれば、宇宙からのエネルギー供給が可能になることから、昨今問題になっている脱原子力かライフスタイルの変更かといった2元論から脱出することが可能ですし、長期的には自然エネルギーよりも希望が持てるように思いました。今私たちがするべきことは、思考を停止をして二者択一をするのではなく、幅広い可能性を模索しながら目の前の問題に対処していく姿勢なのではないかと感じました。もう考えることを国(官僚)に丸投げすることは止めようという言葉が本書から伝わってきました。