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身体を通して時代を読む―武術的立場 (文春文庫)
 
 

身体を通して時代を読む―武術的立場 (文春文庫) [文庫]

甲野 善紀 , 内田 樹
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (1 カスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

『「学び」とは別人になること』、『「生きている実感」に火をともす』、『あらゆる社会制度の分岐点で』―。日本が抱える喫緊の課題の解決策を、介護、教育の世界からも注目を浴びる武術研究者・甲野善紀と、フランス現代思想の研究者にして合気道六段の内田樹が、武術的視座から解き明かした画期的憂国対談。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

甲野 善紀
1949年東京生まれ。武術研究者。20代初めから「人間にとっての自然とは何か」を自らの身体を通して探究しようと武の道を志す。78年、松聲館道場を設立し、独自の武術研究の道に入る。その技と術理がスポーツ、楽器演奏などに応用されて成果が上がり、介護、工学、教育等の分野からも関心が高まり、神戸女学院大学の客員教授も務めた

内田 樹
1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒。東京都立大学大学院博士課程中退。現在、神戸女学院大学文学部教授。専門はフランス現代思想、映画論、武道論。2007年『私家版・ユダヤ文化論』で第6回小林秀雄賞を受賞。『日本辺境論』で新書大賞2010を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 314ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (2010/9/3)
  • ISBN-10: 4167773988
  • ISBN-13: 978-4167773984
  • 発売日: 2010/9/3
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (1 カスタマーレビュー)
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By くにたち蟄居日記 トップ500レビュアー VINE™ メンバー
形式:文庫
 本書を読んで改めて身体というものを考える良い機会となった。

 マラソンを走っている際に一番疲れるのは実は「脳」であるということが僕の乏しいマラソン体験からの感想である。走っている間にひたすら考えることは、走っている速度や残りの距離の計算だけではない。当然ながら足の調子、体の疲れ具合等、自分の体との「対話」を強いられる時間帯でもある。日常生活では考えないくらい体調というものを考えさせられ、その結果頭が疲れてくるのだ。僕はアマチュアのランナーなのでこれで済むが、プロのランナーは更に競争相手との駆け引きもある。本当に頭が疲れるだろうと想像する次第だ。

 そうした身体との対話の中で、改めて驚くことは、走っている際にも僕らは様々な情報収集と対応策を即座に行っているということだ。路面の具合や、傾斜、小石の存在等を目だけではなく足の裏で感じ取り、一瞬に判断して走り方を変えることの連続が「走る」ということである。その際に僕らは無意識にそれをやっているし、また無意識でやれない限り、とても走るということなどは不可能である。
 一言で言うと「足が考えている」ということだ。
 条件反射のテストがある。脛を叩かれると足が自動的に動くという話だ。僕としては、あの不思議な現象も「足が考えている」ということなのではないかと思える。

 そうした「脳以外で考える」という視点で本書を読むことは時として新鮮である。本書で紹介されている「重いものを持つ際に意外と軽いと体のバランスが崩れる」という話も、「身体が何を考えているのか」という一例として読むことも出来る。

 本書を読む限り、武術とは他者との「対話」であるということらしい。その「他者」とは「他人」であることもあれば、上記の「重いもの」も「他者」に含まれると思う。もっと言うと「脳」にとっては自分の身体ですら「他者」の一つであるはずだ。

 そうした「他者との対話」が武術であるという点で、本書が優れた「他者との対話法」足りえていると僕は思う。本書で展開される教育論や社会論は時としてユニークであるが、他者と自分がどう対話するのかという極めて大きなテーマを武術という切り口で切り取ることに新鮮味がある。マラソンにおいても自分の身体と脳との間の対話が疲労の一因であると考える僕にとっては非常に面白く読めた次第だ。
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