言語と道具、農耕・牧畜の地形的起源、都市と階級の成立に関心がある…文明と社会の成立にあたって本質的なことは何だったのか…そんなことに関心がある人には本書をお奨めいたします。文明を生み出した「有機的起源」…表現はしばしば難解ですが壮大な文明史を貫く要素と力学が極めてシンプルに語られています。
垂直位(二足歩行)の獲得とともに歯が小さくなり、眼窩上隆起が小さくなると、大脳皮質の面積が増大し、それが顔と手の神経領域が発展するための基礎となりました。これが文明を生み出した形質人類学的な基礎となったのです。
BC3500年、金属と書字(エクリチュール)が生まれました。
線型的な表記に閉じ込められる前、言葉は統合的な表象能力を持っていました…言葉が螺旋を描きながら、器や盃の表面に世界秩序を表していたような遥か昔の話です。そしてリズムやフォルム、価値など有力な象形(言葉と象徴)の元に人々は集まりそれが民族の起源となったのです。
また、特定の用途に関しては道具を発達させることによって対応した人類は、逆に自らは特殊化を免れて限りなく一般化することになりました。すなわち道具があったから人類は状況に過剰適応することなくあらゆる方向に伸び広がる文明と文化を作れたということでしょう。
農耕は守るべき蓄積を生み出し、監視と防御のため人類社会は集団化の方向に進みました。都市の起源は一種の「防御陣形」にあったということに外なりません。
資産と同時に時間も貯えられましたが、よくよく考えてみますと道具の、ひいては文明の進歩を生み出す源泉としては、本質的には時間が唯一重要なものだったと言えるでしょう。
また、時間と空間の表現は人類が社会化される基本的な形式となりました。たとえばそれは軍人や僧侶など高度な組織体においては時間の区分とリズムの創出が中心的な組織原理になったということです。
王・廷臣・軍人・司祭など都市の構成単位としての社会階級が成立しましたが、職人はそういった明確な属性を持たず個別の技能に基づいた背景的な職業集団を形成しました。王都の住人であるからプロレタリアとも違う職人たち…決して歴史の主役として物語の中心をなすことは無かったが、重要なというよりは背景的な都市の構成単位として王都周辺の居住区域は現代まで引き継がれていると言えそうです。
社会階級の成立はまた経済の始まりでもあり(例えば支配階層の過剰な設備投資)、現代にも繋がる社会と政治経済の基本的な構成は歴史の黎明には既に成立していたと言えます。