20世紀後半は、いわゆる先進国がその科学技術力をビジネスに展開して世界経済を牽引してきた。しかしながら、21世紀に入ると、伸び悩む先進国を尻目に、BRICsなどの新興国の経済成長が目立つようになってきた。本書を読むと、新興国が現在の成長を達成できたのも納得できる。本書では、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカ、韓国、イスラエル、東南アジア、台湾が新興国・地域として取り上げられている。(BRICsの中心国である中国については、別途、出版される由)上記の国々の科学技術政策について共通するのは、自国の特長を生かすための選択と集中が行われているという点である。例えば、人口が多い、資源が豊か、国民の教育レベルが高い、あるいは国の歴史・風土・国民性や自然環境など、各々の国の特長を生かせるように、重点産業分野を選択し、その産業を一層発展させるような科学技術分野に集中して高度化を進めている点が読み取れる。
これらの国や地域が多岐の科学技術分野全般に渡ってレベルを高めるということはないであろうが、選択して集中した科学技術分野については、早晩、国際レベルに達するであろうと思われる。
本書では、各国の特長と、選択・集中した科学技術分野について、具体例をあげながら簡潔に説明してある。また、最終章に、各国・地域の政治経済力を中心とした国力、科学技術力の比較データがまとめて掲載してあるが、参考になるデータである。新興国の科学技術を網羅的に知るには好著である。