京都に住んでいる人の何気ない日常を撮り続けてきた甲斐扶佐義さんの写真集です。
「路地裏の京都」というタイトル通り、市井の人々の飾り気のない素顔がどのページからも伝わってきます。被写体となった人が、きっと安心して撮ってもらえるような優しさが甲斐扶佐義さんからにじみ出ているからこそ、このような写真が出来上がるのかな、と感じました。
子供を撮った写真が一番印象に残りました。素直で、時にはお茶目な表情がその年頃の子どもの感覚でしょうし、よく分かるものでした。
特徴ある女性を撮った写真もそうで、カメラから被写体の女性へ投げかける優しさがあるからこそ生み出される表情と仕草なのだと思います。猫やお年寄りに対しても同様です。
現在、59歳の甲斐扶佐義さんが20代から撮り続けてきた35年間の写真が並んでいます。
京都の町並みはあまり変わっていませんので、35年前も今も服装が異なるくらいで、区別はつきません。それより根底に流れる人々への愛情が変わらないからこそこのような写真が撮れ、それが評価されているのだと思います。
甲斐さんは、同志社大学近くの有名な喫茶店「ほんやら洞」のマスターだそうで、仕事の合間に写真を撮っていたようです。観光客の視点ではない日常の風景を切り取ったような写真ばかりですから、「観光都市京都」というイメージとは大分違う写真ばかりです。
ハレとケといいますが、日常のフッとした瞬間の写真こそ忘れられていく運命にあるわけでそのような瞬間の残滓こそ、今や貴重になっていると感じました。