オカルトじみたそのタイトルに反して、とても真っ当な本。
古くは梅原猛『隠された十字架』から井沢元彦『逆説の日本史』シリーズまで、「怨霊」を切り口として新たな日本史像を提示する本はいろいろとあった。
だが、それらはあくまで歴史読み物的な扱いであり、日本史研究の本流では「怨霊」はキワモノ扱いされてきたといってよい(菅原道真=天神信仰についての研究が数少ない例外)。井沢氏が繰り返し批判する「日本史研究者の宗教的側面の軽視」は決して言いがかりとはいえない。本書の著者は、「怨霊」を正面から研究する数少ない日本史研究者のひとりなのだろう。
食い足りない面もある。霊魂観の変遷を描く、というメインテーマはあるにしても、怨霊の創出と鎮魂の羅列に過ぎないという批判はありえよう。よって井沢氏らの奔放な想像力が生み出す大胆な仮説とも縁遠い。だが、本書のような実証的な研究もまた貴重であろう。
怨霊信仰をテーマとし、オカルトに堕することなく論じてみせた一般向けの本は、実は今まであまりなかったのではないか。
点はやや甘いが、怨霊研究のパイオニアとしての評価をこめて。