( 宮永博行)
(日経アーキテクチュア 2003/05/12 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
この現象を「趣味が都市を変える力を持ち始めた」と読み解く本書は、秋葉原とオタク、そして街の変容を論じた一冊である。著者は建築意匠論を専門とする研究者だ。
著者は海洋堂専務などへのインタビューを通し、1995~1996年のエヴァ・バブルがオタク系ショップ進出の大きな後押しとなり、秋葉原が変わる契機となったとしている。それは池袋や渋谷のような大資本による都市改造とは根本的に違う。秋葉原は「PCに対する愛好を結節点」としてオタクたちに見いだされた「趣都」となり、街全体がオタクの個室が都市空間へと拡張したような場所へと変わっていったというのだ。
エッセンスは第1章だ。このあとはオタク趣味の構造、未来観の変遷がもたらした科学技術少年への影響などが語られるのだが、定量的なデータが引用されているわけでもなく(研究者の著作には単なる「お話」ではなく裏付けを期待したい)、あまり説得力がない。話も秋葉原から離れてしまう。
第1章にしても、たとえば吉祥寺や下北沢はどうなのか、あるいは古いところでいえば、銀座のような街はどうなのだろうか、と問いたくなる。銀座でも歩く人の趣味が街に露出しているからこそブランド店が並ぶのではないか。それは秋葉原が獲得した個性と何が違うのか。また、秋葉原がPCの街へと変貌した1980年代に大きく変わったのは渋谷も同じだ。公園通りは確かに大資本が意図したものだろう。だが、センター街は自然発生的に若者が集まる場所として誕生したのではないか。それと秋葉原の違いは何か。
秋葉原が異色の街であること、今もなお変貌しつつあることは明らかだ。なぜ秋葉原はこうなのか? それを考えることは秋葉原を鏡として文化や都市、社会を考えることだ。本書は秋葉原を考える上で重要な叩き台である。今後の議論は、この上に積み上げられていく。著者にもさらなる深い論考を期待する。(2003年5月号)
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あと、韓国の官主導おたく産業振興施設の話も笑えて楽しい。ただのアキバ論にとどまらない広さを持った現代文化論。すごい。
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