この本をどう評価すべきか迷いました。普通の教科書ではなかなか読み取れない
物理の真髄を衝いた本とするべきか、それとも、著者のこだわりに力点が置かれすぎて
いると見るべきか....
結局、両方だという結論に達しました。
前半では、運動量とエネルギーの違いに力点を置き、力学の初歩を説明しています。
こちらはかなり読みやすいですが、あまりややこしい話には首を突っ込みません。
たとえば独楽の回転にちょっと首を突っ込みますが、直感的に解釈できる
範囲に終始して、首振り運動の本格的な方程式にまでには踏み込みません。
著者の示す力学の関する哲学はなかなか面白いのですが、
力学は初歩の初歩といったところで唐突に終わってしまいます。
電磁気学では、直感に訴える形で、ベクトル解析とマックスウェルの方程式を
説明してゆきますが、論理展開のスピードが速く、端折りも結構有って、
あまりわかりやすい説明とはいえません。電磁気学の後半では、電子が放射する電波や
光の計算や、電磁場が運ぶ運動量とエネルギーの話に収斂してゆきますが、多くの式が
天下りでがっかりしてしまいました。
結局著者が言いたかったのは、動的な電磁気学では、場の持つエネルギーと運動量を
勘定に入れないと、エネルギー保存則も、運動量保存則も成り立たなくなってしまう
ということで、この趣旨を示すことには成功していますが、そこで終わって
しまっています。
電磁気学の初歩的なことはあまり書いてないので、ついてこられる読者は
わずかではないかとか心配です。
結局この本はなんなのか...
著者は物理を機械的に、形式的に学んで判っている気になっている人のために
この本を書いた気がします。その意味ではこの本はある程度成功している
気がします。
しかし、力学や電磁気学を学ぶための最初の本としては、だめでしょう。
普通の教科書とあわせて、副読本として読み流すというあたりがこの本の正しい
使い方ではないかと思います。