森巣博という作家の作品を、私は「書斎の競馬」という雑誌の連載モノではじめて読んだ。
そのとき、この個性的な企画性の高い雑誌にあって、なおことさら異様に輝く魅力的なその作風に翻弄され、
「これほどまでに面白い作家がいたのか!」との衝撃を受けた。
この前後2冊に文庫化された「越境者たち」はそんな森巣の世界を堪能するのにもってこいだ。
と、ここまでは「上巻」の解説にも書かせていただいた。
ここで森巣の思想についても触れておきたい。
彼の膨大な知識は、知を欲する読み手にはたまらない性質のものだ。とにかく面白い。
そして、それらのバックボーンから導かれる森巣の思想は「圧倒的に正しい」と感じる。
「圧倒的に正しい」というのは、ただ「正しい」というのとも若干違う。なにかまっすぐに見られないくらいのまぶしい正しさなのだ。
それがまっすぐに見れない自分を見つけ、しかもそれが快感なのだから仕方ない。
この小説を通して読み終えた人には、きっと新しい「考え方」を身につけるに違いない。
それは生きていく上での、極上のアイテムへ進化する可能性を秘めた「考え方」だと感じる。
こんな小説にはめったにお目にかかれるものではないだろう。感服!