一般的に、抽象性が高い概念ほど、汎用性も高くなる。だから
シド・フィールドの本で挙げられた三幕構成と2つのプロットポイントという抽象的な構造は汎用性(使いまわしやすさ)が高い。そのほかの細かい部分は脚本家の腕次第、というわけだ。しかし、これはあまりにも残酷な話だ。この構造を使って脚本を書いているシドの生徒はたくさんいるが、面白い映画を書いた人は限られている。シドが狡猾なのは「面白い脚本の書き方」は一切教えていないところだ。僕は面白い脚本が書きたい。誰だってそうだろう。
そこで、シド・フィールドを超えて、具体的な面白さに踏み込むという大胆な試みをしてみせるのが、この本。
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第一部は、脚本に求められる二つの軸(プロットとテリング)や、脚本の全体像をはっきりさせるためのショート・プロットという方法や、三幕構成や起承転結などといった脚本の構造的なアプローチを明かしながら、最終的には「シド・フィールドの方法は素晴らしいけど、物足りない」と指摘。第二部から、著者と師匠が生み出した”13フェイズ構造”で、面白いプロットを作る方法に取り組む。
ここまでをメタ的に見れば、まさにシド・フィールドの提唱する第一幕の「状況設定と説明、そして二幕へ転換するプロットポイント」を適確に配置している。ここから逆に考えれば、この本は「名前は売れていないが地道に活動してきた人気講師が、”面白い”に挑戦し、何らかの答えを導き出す、僕らワナビーに向けた、挑戦的指南書」なのである。
第一部を読むに、タイトルの俺様感に反して、著者はとても誠実に”面白さ”を研究している。ここら辺、意外なギャップにキャラ萌えするところである。
第二部からは、シドの言う第二幕、展開部に入る。偉大なる巨人シドに挑み、面白さの秘宝を手に入れるための試行錯誤の部分である。燃えないわけがない。
第二部は"13フェイズ構造"のそれぞれの段階を具体的に説明する。ここがメインと言って良いだろう。
第三部は”リマインダー”という著者独自の面白さを引き出すアイデア。
第四部は物語に欠かせないキャラクターについての掘り下げ。
ここまでが第二幕(展開部、葛藤部)だ。
第三幕(結末)は、この本の中にはない。この物語を完結させるのは、読んで反応する僕達だ。
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さて、話を内容に戻そう。
13フェイズ構造が具体的に書かれるわけだが、僕はこれを見て「アチャー」と思った。冒頭に書いたように、抽象性が高いほど汎用性が高く、抽象性が低ければ汎用性は低いのだ。13フェイズ構造は、13段階もある上に、順序まで決まっていて、内容に踏み込んでいるため、抽象性は高くない。よって、汎用性も低いことは、論理的に明らかだ。ここで読むのを止めようかとも思ったが、著者の心意気を無碍にもできない。それに、抽象性が低いということは、具象性が高いということで、具象性が高いということは、還元しやすいということだ。つまり、使いやすい知識を期待できる。
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読後の感想としては、悪くない本だと思った。”13フェイズ構造”はやっぱり汎用性は高くないが、順序を崩して、それぞれの要素単体を見ていけば、創作の強力なヒントになる要素がたくさんあった。ここに挙げられたヒントを自分なりに噛み砕た上で、再びシド・フィールドの構成に立ち返れば、面白いものが作れそうだ。希望が沸いてきた。
はっきり言って、読んで良かった。
そういうわけで、この本をそのまま受け取らず、批判的に読んでいけば、”伝わる面白さ”に近づいた気分になれるのでは。
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著者がこの本を書き、僕らがこの本を読むという体験も、また一つの物語である。ほろ苦い結末の物語でも、面白いものは面白い。
創作を志しているならば、読まないよりは、絶対に読んだほうがいいと思う。