いかにも緊急出版、という印象で、文章自体はなにか稚拙でジタバタした印象を受けます。また、細部にツッコミを入れるなら、
同じM8.4の地震を、東北の今回震災との比較では『たかだかM8.4』と表現し、南海地震の記述では『M8.4の巨大地震』と表現する等、
アラ探しをすればキリがありません。ただ、ソウであるが故に伝わるものも大きい1冊です。
本書は、大きく見れば、前半と後半に分けられるものと思います。序章〜4章で、今回の東北震災がいかに『想定外』の巨大地震で
あったか、を、ややもすれば混乱気味に、半ば研究者の懺悔として記しています。地震発生のメカニズム等は、アスぺリティモデルの
提示が目新しいものの、学術的な記述と、実際の震災の地震動や津波被害の取材記が混在しており、また、筆者にとっては自明である
(らしい)学者の論文を引用文献として列挙しているだけで詳細が判りにくかったり、といった側面(筆者が助教という立場だから
大先生の諸論に配慮、というのはやや穿った見方でしょうか…?)があります。
後半の5章『防災』と、終章の『シミュレーション・西日本大震災』は、かなり落ち着いた筆致で、研究者の『アウトリーチ』としての
こなれた書き方になっています。筆者が通常、職務として行っていることを紹介しているからだとは思いますが、前半のような混乱した
記述もなく、防災に対しての心構えを説く上で非常に勉強になります。
通読して感じるのは、今回の震災が地震学の最先端で長期予想をしていた方々の予想を遥かに超えた、『将に想定外』の事態であって、
それに直面した地震学者の愕然とした衝撃の大きさがいかばかりであったか、ということ。端的に言えば、『判った気になっていたのが
なにも判っていなかったことが解った』ということでしょう。「わかって“いる”ことと“いない”ことの境界がハッキリしている」と
いうのは、科学的には非常に重要なのですが、『要は、今までの長期予想はアテにならない。ナニが起きても不思議でないことが解った。
だからこそ、想定のハードルを見なおして一層の防災意識の向上と対策の充実を』という、筆者の悲鳴にも似た切迫感・焦燥感はヒシヒシ
と伝わってきます。
アスペリティモデルのような比較的新しい概念以外の、地震そのもののメカニズムや地質学的な理解は、下記がお勧めできます。
これと本書を併せて読むと、改めて日本という国は地震の発生メカニズム故に成り立っている弧状列島、と実感できます。
大地動乱の時代―地震学者は警告する (岩波新書)