もちろん好き嫌いはあるでしょう。見た目とか文体とか。問題はしかし、単なる印象を超えたところで、当の書き手が傾聴に値するヴィジョンや見識をもっているかどうか。本書の狂言綺語はむしろ当然の要請でした。まっとうな学問はそもそもマニア(狂い)の一種なのですから。ナルシスト四方田の『先生とわたし』と本書の決定的な違いはそこにあります。
由良君美も高橋康也もすでに超えられました。その正統性と情熱において冠絶している高山の著作は、案に相違して、絶版・消滅の危機に瀕しているので、心ある編集者はただちに「再結集」の作業に入るべきです。もちろん、高山にもさらに仕事をしてもらわねばなりません。その期待を込めて星四つ。
本書の巻末に掲げられた翻訳予定書目一覧を見て胸が熱くならない学者や編集者は自らの繊弱を恥じて転職すべきでしょう。嗚呼、高山のような人がほかの学科にもせめて一人ずつでもいてくれたなら…