現代美術という、とっつきにくいものを専門にした金沢21世紀美術館を立ち上げ、年間145万人というミラクルな入場者数を実現し、来館したルーブル美術館長も絶賛したという「伝説の学芸員」のサクセスストーリー。長く北米の美術館で学芸員を務めた著者には、「美術館は街の顔」「美術館は誰でも気軽に楽しめる施設」というアメリカ流の美術館哲学が徹底している。
本書を読み、著者の並外れた努力と行動力、アイデア力に感心した。大学卒業後、骨董商で丁稚を3年やった後渡米、ハーバード美術史専攻でトップで博士号を取得、シカゴ美術館などで東洋部長を務めた。シカゴ美術館では展示室の改装で日本政府に1億5000万円拠出させ、金沢21世紀館でもあれこれ集客を考え、絶えず企画を発信し、地元の人も観光客もひきつけているという。
私は金沢21世紀美術館には行ったことがないが、暗い雰囲気の日本の美術館を見るのは退屈なことだった。著者に言わせれば、学芸員にやる気がなく、企画も人任せにするからだという。「美術館は人が来てナンボ」という著者の考えが反映された金沢21世紀館に行ってみたくなってきた。
その一方で、同じ内容が何度も出てくるのには閉口した。金沢21世紀美術館は13時間営業ですという内容は都合3回くらい出てきたんじゃないか。また、巻末の村上隆との対談や年表も、ページを水増しするための対談という感じで、本書の内容を繰り返している部分が多かった。